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1.100万円を投資すると確実に25万円値上がる
2.100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う
そんなウマい話があるかどうかはさておき、実際にこのような投資案件があったとした場合にあなたはどちらを選ぶでしょうか?
本質問に回答する前に次の状況をイメージしてください。
あなたは銀行に100万円の預金があります。老後資金2,000万円が必要な時代と言われていますが、これから働いて稼ぐにしてもそんなに貯められる気がしません。歳をとるにつれて出費も年々増えていくことも見込まれています。昔は銀行の定期預金の利息が良かったようですが、今の低金利の世の中では100万円につく利息はたかが知れています。
そんなある日「ピンポーン」。あなたの家のインターホンが鳴りました。革製の黒のカバンを手にして紺色のスーツを着こなした出で立ちの男性がカメラ越しに見えました。年齢は30歳ほどでしょうか。少しパーマのかかった黒色の短髪の下にうかがえる額に少し汗が浮かんでいました。普段から利用している大手銀行の担当者です。簡単な挨拶をしてたわいもない話をした後に彼は本題に入り「只今2つの投資案件があります」と。さらに続けて「1つめは100万円を投資すると確実に25万円値上がります。なので確実に25万円が増えることになります」
ここで「は?」と、胡散臭いと感じたあなたの感覚は正常です! しかし、そこを考えてしまうと本記事で話そうとしている議論を逸脱してしまうため、登場する銀行の担当者は詐欺ではないという前提でお願いしますね。それでは物語に戻ります。
確実にお金が増える案件に前向きのあなたに対して、彼は「もうひとつの方ですが」とミネラルウオーターを口に運んでから「100万円を投資すると50%の確率で100万円儲かるか、50%の確率で50万円を失うというものです。先ほどの案件と違って貯金を減らすリスクを伴います」と。
さて、直感で答えてください。あなたはどちらの案件を選んだでしょうか?
1の確実に25万円もらえる方? それとも、50万円を失うリスクをとってでも100万円がもらえる方?
ちなみに1を選ぶ人が多い傾向にあるようです。これについて詳細を論じる前に次の2択を考えてみてください。
1.100万円を投資すると確実に20万円値上がる
2.100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う
さて、今度はどちらを選びましたか?
期待値計算をしてみると分かりますが今回提示した2択において期待される利益は、1の選択肢が20万円であるのに対して2の選択肢は25万円です。つまり、2の選択肢を選ぶほうが賢いということになります。にも関わらず、全員が2を選択せずに1を選んでしまう人もいたということです。はじめの選択肢と加えてこのことについての議論が今回のテーマとなります。
■リスクプレミアムという考え方
まず本議論を進めていく前にリスクプレミアムという考え方を理解する必要があります。経済学を学習してきた人にとってはお馴染みの用語でしょうが、そうでない方のために簡単に説明させてください。
リスクプレミアムとは『あるリスク資産の期待収益率から無リスク資産の期待収益率を引いた差』のことです。これは、『リスクをとることによって上乗せされた利益』と言い換えることができます。
ここで冒頭で紹介した2つの選択肢をみていきましょう。
1.100万円を投資すると確実に25万円値上がる
2.100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う
期待値としてはどちらも25万円です。試しに2について計算してみると"50%×100万円ー50%×50万円=25万円"となりますね。しかし、実際にアンケートをとってみると1の選択肢「100万円を投資すると確実に25万円値上がる」が選ばれる割合が多いことが分かっています。どちらも期待値は変わらないにも関わらずです。これは数字だけで考えると不思議な現象です。
次に選択肢1を次のように投資しない選択肢へ変えてみましょう。
1.100万円を投資せずに貯金する
2.100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う
このケースにおいて2の「100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う」の選択をすると明確に回答した人の割合が30%程度であるという調査もあります。すでに皆さんはご認識の通り、2の選択肢の期待値は25万円のプラスなので投資をした方が得に決まっています。
これは損失回避行動と言われいて、人は得することよりも損をすることを嫌がるという性質によるものだそうです。つまり、人は概して数字通りに実行できず、リスクを回避して安定した利益を選ぶ傾向にあるということです。ここで数字通りに思い切りができるーーすなわちリスクを取れるという姿勢はそれだけで得することができるということです。
世の中は、このようにリスクを回避することで損をすることが多いです。理由は先ほど述べたように、安定した利益に対してはリスク分が上乗せされない一方で、リスク資産についてはリスク分が上乗せされるからです。例えば多くの保険商品はリスク回避思考を逆手に取った商売ですし、利回りの良い投資信託や債券があるにも関わらず貯金を選ぶ人が多いですよね。
そのような理由からリスクを避けている人は、避けていない人に比べて気がつかない間に損をしていることになります。これこそがリスクプレミアムによるものです。
さて、冒頭の選択肢も戻りますが、この2つのケースでは1の「100万円を投資すると確実に20万円値上がる」には5万円のリスクプレミアムが上乗せされていることになります。なぜならば2の「100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う」の期待利益が25万円だからです。
■人と同じことをしていては大きなリターンを得られない根拠
ソフトバンクの孫正義社長は何か事業をする際に勝率が6割であれば実行すると話されておりました。これは非常に合理的な思考です。半分より高い確率で勝てるのですから。
しかし、実際にこのように決断して実行できる人はどのくらいいるでしょうか。先ほど説明したように人はリスクを回避する傾向にあるので、多くの人は6割程度の勝率ではリスクプレミアム分を上回るほどの大きなリターンが見込めないと実行できません。そもそも勝率が高い勝負であれば誰でも戦ってしまうため、そこに優位性がなくなってしまいます。その結果、リターンが少なくなるのは当然の帰結です。
これが人と同じことをしていては成功できないという根拠です。人は基本的にリスク回避的です。人と同じことをするということはリターンの少ない安定を求めているということです。もちろんそれはそれで幸せな人もいるかと思いますが、リターンを大きくするという意味では誤った行動と言わざるを得ません。
そもそも世の中は、何かを選択すれば何かを失うようになっています。これまで金銭について考えてきましたがそれだけに限りません。このことは、知識や人脈、社会的地位や名声など多岐に渡って応用できます。ほとんどの人はリスク回避的な行動をとることで今ある現状を維持しながら何かを得ようと動きます。その行動の結果は一見すると何も損をしていないように見えますが、リスクを取っていれば得られた利益を失っていることになりますーーこれを機会損失といいます。この機会損失を念頭に入れて、リスクを許容できるようになるとリスク回避思考から抜け出せるようになれるかもしれません。
■最後に
以上から、リスクを許容することでリスクプレミアムの分だけ得ができ、また、大多数のリスク回避思考から抜け出した行動をとることで大きなリターンが得られるようになることが期待できます。
本記事内でも述べたように、リスクを取るということは金銭的な話だけではありません。もちろんリスクをとらずに安定的な人生を歩むことも一つの選択だと思います。しかし往々にしてリスクをとることが自分の思った人生への近道になることは覚えておきたいですね。
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