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今回は、中小企業診断士二次試験の合格体験記です。
筆者は4年前に一次試験に独学で1発合格しており、その年の二次試験に不合格。翌年は試験を受けずにスルーし、中小企業診断士の講師をはじめた関係で翌々年の1次試験に再度受験して合格。その合格した年にも二次試験を受けられず、その次の年に3年ぶりに受験して無事合格しました。
しばらく試験を受けなかった理由としては、業務が多忙だったことに加えて確実な合格方法が見つからなかったことがあげられます。中小企業診断士二次試験は解答が公表されず、対策が立てづらい試験です。合格体験記を書くにあたって「中小企業診断士は運です!」なんて言っても有用な記事になりません。
そして今年やっと中小企業診断士二次試験に合格できるという自信があったため受験し、見事に合格できました。
他サイト様では独学とは言っても通信講座や情報商材を利用している例が多々みられます。が、本サイトでは書店で購入できる書籍のみで合格した体験記を紹介します。結論から言って、独学は非常に難しかった…… しかし、大変な反面、情報収集能力や分析能力は格段に向上しますね。市場に出回っている書籍をすべて購入して比較検討したりと、無駄な出費も結構かさんでしまったため、このノウハウが皆さんの役に立てられればなと思います。
さらに、初年度は不合格となっているため、なぜ不合格になったのか、その時にはどの教材をどのように使っていたのか、という誤った学習方法にも所々触れていきます。
■概要
中小企業診断士全般につきましては過去の一次試験の記事をご参照ください。本記事では二次試験の中の、特に筆記試験について概要を説明します。
筆記試験を合格すると次に試験としては最後の口述試験がありますが、その合格率が毎年99%以上であることを考えると筆記試験が中小企業診断士試験の最大の山場と考えられます。一次試験をくぐり抜けてきた受験生の中で争わねばなりません。合格率が毎年20〜25%あたりであることを考慮していると、合格点をとったから合格という絶対評価でなく、受験生の中の上位何割かを合格させる相対評価の試験だと考えるのが妥当でしょう。つまり、ハイレベルな受験生の中で上位にならなければ合格できないことになります。
試験科目は事例1、事例2、事例3、事例4の全4科目。それぞれの受験時間が80分なので合計320分の試験となります。それぞれの科目の概要は以下の通りです。カッコ内は一次試験の関連科目になっています。
事例1:組織人事(企業経営理論)
事例2:マーケティング流通(企業経営理論、運営管理)
事例3:生産管理(運営管理)
事例4:財務会計(財務会計)
年度によっては、経済学、経営法務、中小企業経営・政策、経営情報システム、の知識を使う場合もありますが、基本的には企業経営理論、運営管理、財務会計がメインです。つまり、これらの3科目についてはシッカリと理解しておく必要があります。
そして、筆記試験最大の特徴は解答が公表されないことです。出題の要旨は試験委員会から発表されますが、具体的な模範解答は公表されません。ですので、各資格学校が提供する過去問題集の解答がすべて違うことが起こりえるため、非常に学習が難しい試験となっています。せめてもの救いは、暗記科目ではないため学習時間をそれほど多く確保しなくても済むといったところでしょうか。
■試験結果
・得点:254点(400点満点中240点以上で合格)
事例1 :48点
事例2 :68点
事例3 :62点
事例4 :76点
今回は時間の算出が難しく、費用に関しましても市場に出回っている中小企業診断士二次試験対策本をほぼ全て購入したため計算が困難なため割愛させていただきます。私自身はすべての書籍を読破しましたが、購入した書籍の中で個人的に有用と思ったものに絞って本記事で紹介します。
一応、合格した年に関しての学習状況を説明しますと、試験日の10日前から勉強を開始したので総勉強時間は10時間ほどです。が、筆者は中小企業診断士の講師をしていましたので一次試験の知識(特に財務会計)は一般の方よりかなり高いレベルで習得していました。さらに初年度の受験で事例攻略のセオリーは終わらせていたため、事例の解き方も習得した状態からのスタートでした。
事例4は9割取れてる自信があったのですが、成績開示をしてみたらまさかの76点。これは得点調整されている可能性が高そうです。
■計画
自身の経験およびインターネットで調査した結果、事例4に力を入れて他の事例は過去問を1年か2年分だけシッカリと解く計画を立てました。
事例1〜事例3は学習時間と点数が比例しないため、深く踏みこんではいけません。なぜならば、これらの事例は国語力の問題であり、さらに出題者が意図した解答を制限時間内に読み取らなけらばならないという、ある意味博打的要素があるからです。一方、事例4は努力と得点が比例する科目であり、二次試験唯一の「答えがある」科目でもあります。傾向と対策を練れば確実に得点できるということです。しかも、一般的に中小企業診断士受験生は財務会計が苦手とのこと。二次試験は相対評価ですので事例4が得意だと他の受験生と大きく差をつけることができます。
以上より、事例1〜事例3では多面的解答によって出題者の意図を大きく外さないように意識します。多面的解答とは、解答を1つの要点に絞って深く詳細に記述するのではなく、幅広くキーワードを入れ込むことで失点を回避する手法のことです。事例1〜事例3においては満点をとる必要はありません。3科目平均で50点以上取れれば合格は近づきます。なぜならば、仮に事例1〜事例3の平均点が50点だったとしても、事例4で90点取れれば合計点が240点を超えるため合格基準点をクリアできる可能性もあるからです。
あとは、試験委員会の方が書籍を出していますので、通勤時間や風呂の時間などを使って読むようにしました。単純に読み物として面白いですし、中小企業ならではの強みの生かし方や成功例を学ぶことができます。ちなみに筆者は現在までに各書3回以上繰り返し読んでいます。書籍の詳細につきましては【具体的な書籍の進め方】に箇条書きにしております。
学習の注意点としましては、複数の事例を解き過ぎないことです。インターネット上では解いた事例数を競い合っている例もありますが、個人的にはおススメしません。過去2年、3年分を何回も繰り返して「ふぞろいな再現答案」のキーワードと見比べて、解説をシッカリと読み込んだ方が良いと思います。「ふぞろいな再現答案」は解答基準が不明な中小企業診断士試験には強力な書籍です。「ふぞろいな再現答案」は、各年度の受験生の答案と評価(合格、A、B、C、D)を収集し、それぞれの評価と答案を見比べて加点されているであろうキーワードを推定し、編集グループの考察とともに問題の分析、対策をしていこうという趣旨のもと作成されたものです。
不合格になった初年度は過去10年分の事例を万遍なく学習してしまいました。事例を複数解くことのデメリットは、?解いたことで満足してしまい復習時間が減ること、?次の事例を早く解かなければならないという強迫観念のようなものに駆られて1つの事例に集中できなくなること、?書籍購入代金がかさむこと、です。
筆者が合格した年には、事例は過去2年分しか解いておりません。1つの年の事例に注力し、各々3回ずつ復習しました。同じ問題を何度も解いてると分かりますが、事例文は非常に奥が深い。何気ない1文が解答への伏線になっていたりと、事例文すべての文言に意味があることに気がつかされます。
80分以内という制約の中では出題者の意図を完全にくみ取ることは難しいですが、大きく外すことはない解答を作れるようになります。
さて、事例1は人事・組織、事例2はマーケティング、事例3は生産管理、という視点で解く必要がある点を除けば基本的な解答の仕方はすべて同じです。事例文から解答の根拠を見つけ出し、もしも見つけられなければ一次試験の知識を使って解答する、という事例攻略のセオリーを採用できます。
一方で事例4は知識と計算勝負。優先順位のつけ方も必要です。事例4では新問題も出る傾向にあるため、中小企業診断士試験対策の参考書だけでは不十分だと考え、簿記1級のサクッとシリーズ、税理士・公認会計士試験対応の意思決定会計講義ノートを採用するのが良いです。
実際に「意思決定会計講義ノート」は非常に有用でした。元々は、税理士や公認会計士の試験対策書なのですが、中小企業診断士試験にも非常に有用です。全体を通してかなりレベルが高いので簿記1級の書籍と並行して進める必要があります。特にCVPやNPVに関しては本書をマスターしておけば本試験でどんな問題が出題されても対応できるレベルになっているはずです。
なお、平成23年度の本試験には、本書に掲載されている予防原価が初めて出題されています。近々デシジョンツリーも出題されるかもしれません。
簿記1級の本は商業簿記第3巻のキャッシュフロー計算書の章、そして工業簿記第3巻の原価計算の章を完璧にしておくと良いかと思います。余裕があれば1級の商業簿記3冊と工業簿記3冊の合計6冊終わらせても良いかもしれません。平成25年度の中小企業診断士試験では200%定率法が出題されたのですが、商業簿記をやっていれば難なく対応できる問題でした。
あと、問題と課題、対策の違いを理解することは非常に大切です。課題を聞かれているのに問題を答えたり、対策を聞かれてるのに抽象的な解答をしてしまうと大きく失点してしまいます。過去記事にこれらの違いをまとめておりますのでご参照ください。
「問題」「課題」「対策」の違いとは 〜ロジカルシンキング〜
具体的な書籍の進め方は下記の通りです。カッコ内は初年度受験生の完了目安です。一次試験から二次試験筆記試験までは約2ヵ月あるため、合計60日になるようにしました。多年度受験生は1年計画で一つ一つ丁寧に解くと良いでしょう。
1.中小企業診断士2次試験事例攻略のセオリー(10日)
2.中小企業診断士2次試験セオリーで解く模擬問題集(5日)
3.意思決定会計講義ノート ※サクッと受かる日商簿記1級 と併用(40日)
4.中小企業診断士2次試験 ふぞろいな再現答案(5日)
また、空き時間には以下の書籍を読書代わりに読みます。中小企業診断士試験の試験委員会に属する先生方が執筆したものです。
・小が大を超えるマーケティングの法則
・引き算する勇気 ―会社を強くする逆転発想
・ビジネスモデル革命―グローバルな「ものがたり」への挑戦
上記書籍を読み終えて余裕があるなら「スモールビジネスマーケティング」もおすすめです。ただし、小が大を超えるマーケティングの法則とかぶってる内容も多いので必須ではありません。
■実行
まずは「中小企業診断士2次試験事例攻略のセオリー」を解きます。事例を解くノウハウが詰まっていますので、はじめはこの書籍からはじめると良いかと思います。他の書籍から解いてしまうと、何となく解説を読むだけであいまいな理解になってしまうのですが、事例攻略のセオリーでは論理的に解答の導き方が説明されており、なおかつ時間配分のモデルまでも提供してくれています。
本書で演習が足りないと感じたら「中小企業診断士2次試験セオリーで解く模擬問題集」を補完教材として解くと良いでしょう。セオリー通りに演習を何回もこなすことでセオリーを身につけることができます。
なお、「中小企業診断士2次試験事例攻略のセオリー」は年度によってはプレミアがついて高額になることがあるため、最新のものを早めに購買すると良いでしょう。もしも買うのが遅れてしまった場合、過去のもので安いものを探して中古で購入すると良いです。というのも、セオリーのノウハウはどの年度のものを買っても変わりなく、解く対象の問題が異なるだけだからです。
次にはじめるのが「意思決定会計講義ノート」です。これが非常に大変です。ちなみに筆者はこの本を30周くらいこなしています。もう全ページ皺くちゃです(笑)。この本は一次試験を受験する前に着手すると良いかもしれませんが、そうすると一次試験の学習効率が落ちてしまうのが悩みどころです。
直接原価計算のメリットやデメリット、CVPやNPVの多岐に渡るバリエーション等、非常に多くの内容を、しかも高いレベルで学ぶことができます。本書に載っていない要点で中小企業診断士試験で頻繁に出題されるのはキャッシュフロー計算書関連だけでしょう。そこに関しては、サクッとシリーズの商業簿記第3巻の対応する章を反復演習すれば問題ありません。キャッシュフロー計算書は原理さえ分かってしまえばなんてことはないのですが、丸暗記で対応しようとすると誤答が増えます。実際に平成28年度試験では前年度と今年度分の減価償却費が問題文で与えられており、今年分のキャッシュフロー計算書を作成する問題が出題されました。減価償却費の増加分を今年度分に計上していると解答した人がちらほらいたようですが、原理を理解していれば今年分の減価償却費だけ考慮すれば良いなんてのは容易に分かることです。
閑話休題、意思決定会計講義ノートを進めるにあたってつまずいたら、サクッとシリーズ(工業簿記 第3巻)に戻ると理解できるようになります。時間があれば工業簿記第3巻を仕上げてから意思決定会計講義ノートに進むのが良いので、試験日までの残り日数と勘案して進めることが肝要です。
最後に着手するのが「中小企業診断士2次試験 ふぞろいな再現答案」です。
これまでに、事例攻略のセオリーで各事例の解き方を習得済みで、意思決定会計講義ノートおよびサクッとシリーズで事例4にも対応できる知識・計算力が身についているはずですので、今度は実際の試験問題と解答用紙をダウンロードして、時間を計測して解くようにします。
この段階で学んで欲しいことは、事例攻略のセオリーが絶対ではないということです。ふぞろいな再現答案をやると分かりますが、事例文の内容が複数の問題に渡ってキーワードとなっていることがあることに気がつきます。ここで意識すべきなのが多面的解答です。基本的に事例攻略のセオリー通りに解けば良いのですが、迷った場合や少しでも自信がない場合は、与件文中の複数のキーワードを盛り込んで部分点を稼ぐのが得策です。
事例文を抜き出す際の留意点としては、ただ単に事例文の言葉を使うだけでは不十分だということです。
例えば、「売上が向上していないA社の組織上の問題点をあげよ」という設問で、事例文に「A社は事業部間で人員の異動が行なわれていない」と書かれていた場合、そのまま抜き出して解答しただけではダメです。異動が行なわれていない結果、何がおこり、どういう問題が生じるのか、まで書けるかどうかが合否を決めます。解答例としては「A社は事業部間で人員の異動が行なわれず、繁忙期に部署間異動を通じて適切な人員配置ができないため、人手不足の事業部では顧客への十分なサービスが提供できず、売上に伸び悩んでいる。」のように、具体的にどういった状況で、どういった問題が生じているか、まで論理展開しなければなりません。
もちろん、文字数との兼ね合いになりますので、そこら辺は本試験で臨機応変に対応する必要があります。
さらに、各事例には「助言系」と呼ばれる問題が存在していることに気がつきます。この「助言系」の問題は、文中からただ単に抜き出すのではなく、事例文の内容をヒントにして一次試験の知識を活用して解く問題です。これにはフレームワークが存在し、事例1であれば「○○によって従業員のモラール向上を図る」「○○の人員を増強し、△△できる組織体制を構築する」、事例2であれば「○○に対し、高付加価値である△△に商品を、□□を通じて販売する。それにより、客単価が上がる」のような「誰に、何を、どのように。効果」を基本とし、事例3であれば「○○の一括購入、一括配送の体制を構築してコスト削減を図る」「作業の標準化を実施し、○○面での品質改善を図る」等、です。
補足ですが、文字数調節として「愛顧:顧客ロイヤルティ」「士気:モラール」のような組み合わせをいくつか覚えておくと、どの問題に対しても文字数ギリギリまで解答欄を埋めることができるようになります。
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先日、高度情報区分のITストラテジストに合格しましたので、いつも通り合格体験記を書いていきます。
ちなみに筆者はITストラテジストの実務経験はなく、また他の高度区分を取得していません。ITストラテジストが初の高度情報取得となります。
今回の秋試験は、元々情報セキュリティスペシャリストかネットワークスペシャリストを受けるつもりでしたが、忙しい時期にあり勉強時間が確保できない恐れがあったので、知識問題の少ないITストラテジスト試験を受けることにしました。予想通り、試験前はほとんど勉強できず、勉強時間は累計で12時間しか確保できませんでした。が、結果は合格。記念受験のつもりで受けたので合格したときは目を疑いました。
なお、関連資格の中小企業診断士試験に関して興味のある方は以下のリンクをご覧ください。試験範囲が類似しているため、同時に受験するとシナジー効果が得られます。
中小企業診断士1次試験 独学1発合格 〜勉強時間: 250時間〜
■概要
本試験は、IPAの公式ページによると以下のように定義されています。
高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術を活用して改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また、組込みシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者
まぁ小難しく書かれていますが簡単にいうと、企業の経営層に対してITを活用した利益増加や業務改善を提案したりするのが役割ってことですね。CTOとかCIOとかをイメージすると良いかと。試験を受ける際にも、常に経営層に提案するつもりで答案を作ることを心がけることが重要になります。
また、ITストラテジスト試験の難易度についてですが「ITストラテジスト 難易度」とかで出てきたサイトをみると必ずといっていいほど最高ランクに位置しています。弁護士や公認会計士とならんで表示されることも少なくありません。確かに非常に難しい試験ではありますが、弁護士や公認会計士と比べて私生活を犠牲にするような膨大な勉強量の必要な試験ではないため、誰でも合格できる試験ですので、ぜひとも驚異的な難易度に尻込みせずに挑戦してもらいたいと思います。現に筆者は実務経験がなく、さほど勉強せずとも合格できましたので。
次に試験方式ですが、4段階選抜方式となっています。
他の高度区分を受験している方々には説明の必要ないと思いますが一応説明すると「午前1」「午前2」「午後1」「午後2」の4科目を受けることになります。午前1と午前2はマークシート方式、午後1は記述方式、そしてITストラテジスト試験では午後2は論文試験となります。以下順に詳細を説明します。
【午前1】マークシート形式
午前1は主にITに関する基礎知識が出題されます。過去2年以内に応用情報技術者に合格、もしくは過去2年以内に他の高度情報区分の午前1試験を合格していると免除になります。ITストラテジストにおいては例年受験生の6割ほどが免除するようです。ただし、ITストラテジストは広い知識を必要とされる業務のため、ITストラテジスト試験に合格できるレベルにある人はたとえ試験免除がなくても無勉強でここはパスできると思います。そうはいってもここで落ちると不合格になってしまうので少しでも対策をしておくのが賢明でしょう。
【午前2】マークシート形式
午前1と比べて範囲が狭まり、狭く深く問われる科目です。特にITストラテジストでは、マネジメント系とストラテジ系の問題が多く出題される一方、ネットワークやデータベースなどはほとんど出題されません。他の高度区分と比べて計算問題は比較的少なく、用語の確認が多いイメージです。問題数が少なく小さいミスが大きく影響します。また、気をつける点としては技術系の内容があまり出題されないため、IT系業界の方には無勉強は多少つらいかもしれません。例年2割ほどの受験生がここで足切りを食らっています。
【午後1】記述形式
ここからがITストラテジスト試験の本番、そして知識問題がほとんどなくなります。問題文を適切に読解し、問われている内容を本文から忠実に解答していくことになります。知識を吐き出すというよりも、文章を理解する国語力が必要になってくるため、一朝一夕で対応することは難しく、逆に国語が得意な人であればほとんど勉強しなくてもパスできるため、勉強時間を減らして合格できるところでもあります。例年4割ほどの受験生がここで足切りをくらうようです。
【午後2】論文形式
ITストラテジストの最難関。いくら勉強しても受からない人がいるのは午後2が原因であると考えてまず間違いないでしょう。午後1をクリアしてきた受験生の中での勝負になるため、ハイレベルな争いとなります。当日の試験では原稿用紙を渡されて、自分で内容を構成して1からすべて記入することになります。試験時間は120分と長く、構成を練った後は試験時間終了まで、ひたすら書き続けることになります。試験自体の時間は長いのですが解答に要する時間が非常に少なく、論文ネタの事前準備が必要な科目です。
■試験結果
・期間:7日(勉強時間 12 時間)
・費用:18,708円(受験料5,100円、参考書代等13,608円)
・得点
午前1:免除
午前2:84点(100点満点中60点以上で合格)
午後1:74点(100点満点中60点以上で合格)
午後2:A(A評価で合格)
合格基準は午前、午後ともに60点以上となっていますが、午後1と午後2については合格率調整が入っているものと思われます。毎年合格率が15%ほどになっているのをみると、大体その前後になるように調節されていると考えるのが妥当です。つまり、全受験生の上位15%に入ることが目標になります。
■計画
まずはインターネットでの情報集めです。
受験の申し込みをしてから、やはり勉強時間がほとんど確保できない状況になりましたので、テキストや問題集をひとつひとつ完璧にするのではなく、複数の書籍を流し読みをして試験に備えるようにしました。この方法は一般的な試験ではNGなのですが、このITストラテジスト試験では有効です。なぜならば、暗記する内容が極端に少ないため1冊をとことんやり込む必要がなく、色々な合格者の論文を数多く読むことで合格レベルの答案の書き方を学ぶことで、試験の感覚をつかむことができるからです。
購入する書籍は過去問を2冊、その他には午前用の知識まとめに1つ、そして午後2の論文用に1つ購入することにしました。
過去問については、iTec社の「徹底解説ITストラテジスト本試験問題(2024時点ではITストラテジスト総仕上げ問題集)」と「ITストラテジスト 専門知識+午後問題の重点対策」を購入することにしました。これはどちらかに絞っても良いと思いますが、高々数千円ケチることで1年無駄にしたくなかったため、念のため両方買うことにしました。
そして午前2用に「ITストラテジの基礎」を1冊購入。午前1から受験する人は、念のため午前対策用書籍を1冊終わらせておくと良いと思います。そして一番力を入れるべき論文用に「ITストラテジスト 合格論文事例集」を採用しました。この本にした理由は、豊富な論文事例とともに、口コミ評価が高かったからです。
試験準備は試験日直前の1週間前から。他にやることがあったため非常に大変でしたが、時間を見つけて何とか12時間確保することができました。
■実行
まずは午前の基礎知識から。書籍を開いて中を読むと、初見で解ける問題だらけ。筆者は中小企業診断士の対策講師をしていることもあり、経営系の用語には日頃から触れる機会が多いため、1時間ほどかけて半分ほど読み進めたところで十分だと判断し、午後1に進むことにしました。経営系の試験を受験したことのない人はこの1冊をしっかりと終わらせたほうが良いと思いますが、特に中小企業診断士や公認会計士の受験経験者は午前はサラッと確認するだけで良いかと思います。
次に午後1に進みました。
初めに過去問を開いて思ったのは……中小企業診断士二次試験と同じ。試しに問題を解いたところ、これも午前同様ほとんど解けました。一応過去問に載っている3年分だけは終わらせましたが、特に実際に時間を計測して解くということはせずに電車の中などの隙間時間を使いました。過去問は2冊購入していたので、1つの問題に対して2冊分それぞれの解説を読みながら進めました。
午後1は、4つの選択問題から2つを解く形式なのですが、第4問目は組み込み系の問題となっています。そのためか、組み込み系をやったことがない受験生はそれを敬遠するようですが、午後1に関して言えばそれは得策ではありません。午後1は国語の試験です。必ず文中に解答の根拠があるので、組み込み系だろうがシステム開発系だろうが解き方は変らないため、本番は4つの問題をすべて吟味してから選択することをおススメします。
なお、試験時間は90分ですので、1問あたり45分で解くことを目安にすると良いでしょう。本番では、たとえ1問目を解答中でも45分経過したら次の問題に移るようにすべきです。
なお、国語試験に自信がないという人に筆者がおススメする午後1対策は中小企業診断士二次試験対策本として有名な「事例攻略のセオリー」です。全ての回答の根拠は本文に存在し、もしも本文中になかった場合は午前の知識で解く、という記述試験の基本中の基本が学べます。ITストラテジスト受験者にとって特に関係するのは中小企業診断士の事例3でしょう。生産管理はITストラテジストでも頻出です。逆に事例4には一切手を付ける必要はありません。この本を仕上げれば合格点に達することができるでしょう。
そして最後の午後2。
「ITストラテジスト 合格論文事例集」の第1部の合格論文の書き方を読み進めました。作文と論文の違い、章立てにすること、論文を書く前に全体構成を考えること、文字数指定に気をつけること等、基本的な作法が書かれていました。中でも一番役立ったのはワークシートです。書籍の後ろに論文作成に役立つワークシートが用意されており、それを埋めていくことで論文構成を作ることができます。試験前にこのワークシートを使って論文ネタを作っておきます。
次に論文のネタについてです。筆者は、ITストラテジストの実務経験がありませんので、自分が下流エンジニアとして携わった案件を思い返し、上流のITコンサルタントや顧客の考えたアイデアをさも自分が考え出したかのようにストーリーを作り上げ、さらにその中で自分なりに工夫したかった点などを盛り込んで、頭の中にオリジナルの案件を2件ほど用意しておきました。それを出題に合わせて調整しながら答案を作ることで、勉強時間を大幅に減らすことができます。
ITストラテジスト試験の他受験生はベテランがほとんどで、彼らは多くの案件を経験しているため引き出しが多く、そういう人たちは試験の場で出題内容に合わせることができるかもしれません。しかし、実務経験が不足している筆者がそれをできるはずがありません。事前に用意する2つに関してはベテラン勢並み、もしくはそれ以上のレベルで用意しておき、それを適宜問題に合わせて変更するほうが得策でしょう。
また、午後2は3つの選択問題のうちから1つを選ぶ方式なのですが、必ず組み込み系の問題が1題含まれています。午後1と違って全く携わったことのない案件で論文を組み立てることは難しいので、普通のSEであれば組み込み系は対象外になると思われるため、本番試験では2つのうちから1つを選択する形になると思います。
試験日までの日数が少なく、一度も論文を書く機会はありませんでしたので、とにかく本書の論文事例を読みました。ただ読むだけでは意味がありません。内容はどうでも良いので、重視すべきは論理展開。案件の中で何かアイデアを出すときは必ず複数列挙し、その中から理由とともに1つに絞るようにしました。そして、案件が順調に進むことはまずあり得ずトラブルはつきものですので、案件の最初と途中にそれぞれ問題(問題解決の際の問題の意)があったというシナリオを入れて、それを○○という工夫で解決した、というような展開にしていきました。
特に、ITストラテジスト試験においては、問題に直面した際に、ツールを用いて華麗に解決する、という方法は歓迎されないらしく、体を使って動き回ることを盛り込むと評価点が上がる、という意見が多かったので、顧客のキーマンに何度も足を運んで直接提案をしたり、それでも無理なら顧客の担当者にお願いして打ち合わせの場を設けてもらったり、社長に取り次いでもらってトップダウンの意思決定をしてもらったり、といったストーリーを作り上げました。
最後の改善点については、自分の提案について抜けがあったというストーリーにするのではなく、こういう工夫をすればより顧客の満足を得られた、次のリリースではこういう点を組み込んで利益増加を通じて顧客満足を図る、というようにしました。そうすることで、自分の提案にアナが少なく、かつ顧客志向であることをアピールできます。
なお、時間配分は、はじめの40分は論文構成を考え、残りの80分で一気に仕上げると良いと思います。書くスピードにもよると思いますが、これなら大体文字数の最低ラインはクリアできると思われます。
本番では、本書に記載されているレベルの論文を書くことは不可能なので、多少繰り返しを使って字数を稼ぐことを考えたり、多少の矛盾があっても気にせず答案を書こうと思ったり、していました。
■本試験
試験会場は東京都三鷹市の明星学園高校でした。午前1が免除だったので、午前は時間に余裕がありました。なので、自転車で1時間かけて試験会場付近の無料駐輪場に停めてそこから歩いて会場に向かいました。今回は情報セキュリティスペシャリストと同じ試験会場らしく、比較的年齢層の低い受験生も多く見られましたが、自分の部屋に入ると周りはほとんどベテラン技術者といった風格の方だらけでした。
まずは午前2から。試験時間が短いのですが、その分問題数も少ないので時間を半分以上残して順調に終わりました。途中退室ができないため、何度も見直しして点数予想まで計算しました。厳しめの採点で6割は超えていたので安心して昼食を迎えられることができました。
午後1は、初めの選択は第2問の物流を選び、問題選択に成功したためほぼ満点を取ることができたと思います。そして残りの3問を見渡して第4問を選びました。初めの方の問題は解答の根拠が見つけやすかったのですが、後半にいくにつれて難しくなっていき、全問解き終えた時には解答を重ねたものが結構ありました。
時間ギリギリまで根拠を探し続けましたが、結局書き直すことなく試験時間が終了。ここで足切りをくらったかもしれないという不安とともに答案を提出しました。
午後2では、予想とは大きく異なった問題が出題されました。
事前に用意したストーリーを適用しづらかったのですが、半ば強引に当てはめて論文構成を作成していきました。そのため、多少問題に対してズレた解答をしていた不安はありましたが、時間は120分と少ないため後戻りはできず、ひたすら書き続けました。
試験時間が残り30分となったところで、それまで1回も論文を書いていなかったことが仇をなしてか、文字数が足りないという状況に陥りました。そこで、減点を覚悟で特に強調したい部分を言葉を代えて繰り返すことで文字数稼ぎに走りました。試験時間が終わるまで一切止まらずに書き続けて、文字数を少しオーバーしたところで終わりを告げるチャイムが鳴りました。長かった試験が終わってホッとしたと同時に、かなり適当に答案を埋めていたので不合格も確信していたため、来年試験にはどうやって挑もうか思考を巡らしました。
2ヵ月後の合格発表日も結果を確認せずに、それから10日以上経ったところでたまたま受験票をみつけたので確認してみたら、なんと驚きの合格。思いもよらなかった結果にしばらく呆然としながらも嬉しく思いました。
■総評
今回、12時間という非常に少ない勉強時間で合格することができましたが、誰でもこの時間で合格できるとは思いません。やはり、中小企業診断士試験の経験があり、午後1までの勉強時間を極端に減らせたからここまで勉強時間を減らすことができたと思います。
また、論文試験は運も必要になってくるため、人によっては何回受験しても受からないという事態に陥る恐れもあります。採点基準が不明なため、雲を掴むような勉強になりがちですが、論文試験に関しては5割弱が合格できるため、まずはほぼ確実に午後1を突破できる力を身につけ、あとは毎年諦めずに受験し続けるという強い意志を持つことが肝心です。
あと、試験は何が起こるかわかりません。筆者自身、当日自信のない試験は受けずにスルーしたりすることがあったのですが、今回の試験を期にその考えを改めて1%の合格可能性がある限り、取りあえず受けていこうというスタンスにすることにしました。
受けなければ受かることはないのです。
◎ITストラテジスト試験午後?問題の解き方のnote
ITストラテジスト試験午後?問題の解き方を説明したnoteを投稿しました。事例攻略のセオリーが絶版になったため、代替書籍を求める声が多かったのがnote執筆理由です。以下のより飛んでいただければ幸いでございます。
なお、午後?に関しては今のところ執筆未定です。要望があれば執筆することにいたします。
最後に。
実務経験がないというところで誤解がないようにするため、筆者の経歴は「スカイプ家庭教師」でご確認を。IT業界では下流エンジニアとしてテスター及びプログラマーを担当しておりました。
本ブログで紹介した書籍は以下のリンクから
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いざ問題に直面した際、適切な解決策を提案できますか?
問題解決に不慣れな人は、いきなり問題を解決しようとしたり、無計画に情報収集を始めたりすることがあります。これは避けるべき代表的な失敗例であり、実際にほとんどの人がこれらのアプローチのどちらかに陥ります。
ただし、問題解決には特定のフレームワークが存在します。フレームワークは物事を論理的かつ合理的に考え進めるための基本的な枠組みであり、これを意識することで問題解決が効率的に進み、解答の質を向上させることが可能です。
本記事ではフレームワークを活用して質の高い解答を導く問題解決のプロセスについて議論していきたいと思います。
■なぜいきなり問題を解こうとしてはいけないのか
問題解決を進める上で、なぜいきなり問題を解こうとしてはいけないのでしょうか。問題に直面した際、まずは問題から一歩距離を置き、高い視点から物事を俯瞰(ふかん)することが重要です。
問題は多岐にわたります。組織問題から個人的な問題までさまざまですが、一人で全ての問題を解決することは不可能です。したがって、本当に解くべき問題を絞り込むことが重要です。絞り込んだ本質的な問題に焦点を当てることで、アウトプットは飛躍的に向上します。
問題を解く前に、その問題が本当に解く価値があるかどうかを検討することが大切です。やるべきことに焦点を当て、無駄なことに時間を費やさないようにしましょう。
次に、問題を解くためには適切なレベルまで問題を分解する必要があります。例えば、売上が下がっているという一般的な問題を解決するためには、客単価×客数や地域ごとの売上など、問題を本質的に分解していくことが求められます。
■なぜ闇雲に情報収集をしてはいけないのか
問題解決が絞り込まれ、解決すべき問題が明確になったら、次に情報収集のフェーズがやってきます。しかし、手当たり次第に情報を集めることは避けるべきです。そこで役立つのが情報収集のためのフレームワークです。具体的なフレームワークとして、業界分析のための5F分析や商品戦略のための4P分析、マーケティング環境の分析に使われる3C分析、自社周りの環境を把握するためのSWOT分析などが挙げられます。SWOT分析については以前紹介しているのでご参照ください。これらフレームワークを活用してダブりなく、漏れなく必要な情報を手早く入手します。
ただし、フレームワークは使い方に注意が必要です。状況によってはフレームワークだけでは不十分であり、柔軟に使用方法を変える必要があります。状況を理解し、適切なフレームワークを選択し、正しく使うことが重要です。客単価や客数を求めるのにSWOT分析が適切でないことは容易に想像できるかと思います。
また、情報収集の際には一次情報にアクセスすることが重要です。誰かから聞いた情報ではなく、直接現場に行ったり、本人が述べたり書いたりした情報を参照することが信頼性の向上につながります。
■次ステップから問題解決までの大まかな流れ
問題が分解され、必要な情報が集まったら、次に問題を優先順位付けする必要があります。これは他人を説得するためにもストーリー性を持たせるために重要です。問題の優先順位が付けられたら、各問題について分析と検証の方法を考えます。最終的には、論理構造を確認して他者に伝わる形でまとめることが求められます。
■安宅 和人の『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』を読んで
今回の記事では、『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』という書籍から得た知識を、私自身の理解のためにまとめました。何度か読み返しても理解が進まなかったのですが、ブログに書き起こすことでかなり理解が深まりました。
この本はマッキンゼーで戦略コンサルタントとして活躍した著者が、問題解決の本質をまとめたものです。読んだだけでは実践に役立つレベルにはならないかもしれませんが、是非一次情報として手に取ることをお勧めします。
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JUGEMテーマ:ビジネス
『情けは人の為ならず』という言葉をご存知でしょうか?
次のうち正しいものを選んでみてください。
A.人に情けを掛けておくと巡り巡って結局は自分のためになる
B.人に情けを掛けて助けてやることは結局はその人のためにならない
C.(A)と(B)の両方
D.(A)と(B)とは別の意味
文化庁がとったデータによると正しく答えられたのは全体の45%程度だったようです。つまり、日本人の2人に1人はこの言葉の意味を分かっていないことになります。
答えは(A)の「人に情けを掛けておくと巡り巡って結局は自分のためになる」です。しかし「人に情けをかけることは結局はその人のためにならない」と答える人も同程度いたようです。「人の為ならず」というのは「人の為にならない」、つまりはその逆の「自分の為である」と読み替える必要があるわけです。
さて、本記事は国語の誤用問題の確認テストをしたいのではありません。この「情けは人の為ならず」という振る舞いが実社会においてどのように影響するかについて議論していきたいと思います。
■成功と失敗の背後にある3つの人格タイプ
世の中の人たちのタイプは大きく3種類に分けられます。まずは自分の取り分をできるだけ多くしようとするテイカー、自分よりも他人の取り分をできるだけ多くしようとするギバー、そして自分と他人の取り分を釣り合わせようとするマッチャーです。
この3タイプについて仕事業績および学業成績で調査した結果があります。そのソースは記事の最後の方で紹介します。さて調査の結果、一番失敗グループと一番成功したグループはどのタイプだったでしょうか。先を読み進める前に少し考えてみてください。
どうでしょう。答えは決まったでしょうか。
まず、一番失敗したグループはギバーだったようです。実はこれについては多くの人が予想できたようです。ギバーというのは他人に与え続けるがゆえに、自分を犠牲にしてしまってまで尽くしてしまうことが原因のひとつとして考えられますね。
それでは、逆に一番成功したグループですが、こちらはほとんどの人が誤っていたようです。実は、そのグループもまたギバーだったという興味深い結果が出たのです。アメリカの成功者は多額の寄付をするので有名ですが、彼ら彼女らは金持ちになったから寄付するわけではなく、元々寄付するような性格だったから成功できたと考えると納得できます。マイクロソフト社のビルゲイツさんは多額の寄付をしていることで有名です。なんでも個人で旅行するときは飛行機のエコノミークラスで移動するのだとか。そもそもテイカーであればいくらお金を持っていても自分が損をする選択はしません。具体的な名前をあげるのは避けますが、とある世界最大サイトの創業者は寄付額が極端に少ないことで国民から非難を受けているようです。
自分よりも相手を優先するギバーが成功するための環境として、まず世の中全体のパイの大きさが決まっているかどうかというのは考慮に値します。もしパイの大きさが決まっていた場合は、自分の取り分をできるだけ多くしようとするテイカーが上位を占めるのは想像に難くありません。
■パイの増大とWin-Winの可能性
もし世の中全体のパイの大きさが決まっていて、そのパイを皆で取り合うような世界だった場合は、人に情けを掛けるのは得策でないかもしれません。そのケースではWin-Winの関係など存在せず、すべてが競争で成り立っているため、情けを掛ける余裕など存在しないでしょう。
しかし、世の中は本当にパイの大きさが一定なのでしょうか。世界中には未開発の地域は多く、宇宙開発もほとんで実施できていない状態です。20年前の技術と今とを考えると、スマートフォンも存在せず、AIが今ほど発展しておらず、ビットコインや量子コンピュータもありませんでした。新しい領域が存在する限り、パイは大きくなり続けます。このように世界にはまだ未開のモノが多く、また常に前進を続けています。パイの大きさは決して一定ではなく、常に大きくなり続けているということです。
この考え方を小さなコミュニティに応用してみます。組織のチームについて考えてみてもいいかもしれません。はじめ売上は小さく、構成員も数人程度です。しかし、売上が増えて実績が上がるとともに構成員は10人を超えていき、徐々にチームの規模が増えていきます。売上の伸びがメンバの増加よりも早かったとすると、このチームではパイの取り合いは起こらず、各メンバが得るパイは大きくなります。例えば、3人で売上300万円の場合は1人あたりの売上は100万円です。それがメンバが10人に増えて売上を2,000万円に増やすことができたとします。すると1人あたり200万円の売上になります。3人から10人へとメンバは増えましたが、それにつれて全体のパイが300万円から2,000万円へと増えたため、全員がWin-Winとなることができたわけです。
以上のように全体のパイというものは拡大する前提だと、誰かが得をしたことによって誰かが損をするといったような取り合いにはならないことが分かります。
■情けは人の為ならずーーギバーの成功戦略
テイカーは既存のパイの大きさを変えようとはせずに取り合うことを考えます。マッチャーはパイを皆で平等に取り合うように考えるかもしれません。それではギバーはどうでしょうか。
はじめに失敗するギバーと成功するギバーがいると紹介しましたが、パイの大きさを考えることで両者の違いをみることができます。失敗するギバーはパイの大きさを変えようとせずに他の人が得するように自分のパイを譲ってしまいます。いわゆる自己犠牲です。これではテイカーの食い物にされてしまっている状態です。
それでは成功するギバーはどのように行動するでしょうか。ここまでの議論をみてきた皆さんは想像できたかもしれません。成功するギバーはパイの取り合いではなくパイ自体を大きくして、他人と自分の両方の取り分を大きくするように動いていたのです。他のギバーはパイを大きくしてくれたことに感謝してパイを分け与えてくれます。マッチャーは自分の取り分を大きくしてくれた分だけパイを還元してくれます。その結果、パイを大きくしたギバーが一番大きく取り分を増やしていたということです。
まさに「情けは人の為ならず」。人に情けを掛けておくと巡り巡って結局は自分のためになるというわけです。
■アダム・グラントの『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』を読んで
本屋に足を運んで何気なく手に取った一冊がこちらの本でした。かなり前に知り合いからおススメされたものの、当時は行動経済学を中心に読み漁っていたため、読めなかったことを思い出してその場で購入を決めました。読んでみると想像以上に面白い。以前に「影響力の武器」を紹介しましたが、その著者ロバート・B・チャルディーニも本書を絶賛しているようです。
人を「ギバー」「テイカー」「マッチャー」に3分類をし、ギバーがもっとも得するという話を統計データとともに示してくれています。本記事のデータは本書を引用しております。
本を読み終えて私なりに理解した内容をこの記事にまとめてみました。しかし、書籍を読んでの感想は人それぞれですので、興味を持った方には是非とも読んでもらいたいと思います。特に、成功するギバーと失敗するギバーの違い、成功するギバーがテイカーから身を守る術については書籍に詳しく紹介されております。
自分だけが得するのではなく、自分も皆も得する。そういった思考で何事も進めていきたいですね。
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JUGEMテーマ:ビジネス
勝利を得る役目を担う者
戦争を起こさせる者
飢饉をもたらす者
死に至らしめる者
新約聖書ヨハネの黙示録に登場する神の使いである四騎士です。聖書の中でのみ存在するとされる彼らが、今まさに私たちの世界に誕生していると言われても中々に実感が湧きにくい。
さて、私のブログのアクセス数トップの記事は中小企業診断士試験の受験関連のものです。中小企業診断士というのは、いわゆるコンサルティング業務のことで、大企業というよりは中小企業に特化したコンサルティング知識を学ぶことができます。そのため大企業、中小企業含めてビジネス全体の戦略に関心をもった場合、この中小企業診断士試験では限界があるのも事実です。
中小企業診断士試験の主催者は経済産業省です。バブル景気の時に日本は確かに世界のトップを走っていたかもしれません。当時の世界時価総額ランキング上位には、NTTや各種日系銀行の名前が並んでいました。ですが、今現在は上位のほとんどを米国に占められ、今後中国やインドが世界を牽引していくという予想が立てられています。ということは、日本の産業というものは世界の中では決して最先端ではなく、その国の省庁が作成しているコンサルティング試験は果たして役立つのだろうか。しかも実際にテキストを作っているのも起業家かどうかも疑わしく、頭でっかちの官僚や研究者である可能性もある。
その中で実際に世界のトップ企業と戦ったアメリカ人起業家が書いた本があります。今現在世界の覇者である企業がどのような特徴があるか、についてその書籍をベースにして紹介していきたいと思います。
■成功に必要な要素
まず成功というものについて考えていきたい。成功するのに必要なのは一般的に努力と才能が必要だと言われます。ですが、それに加えて運という要素も忘れてはならない。どんなに才気溢れた努力家でも成功しない人たちは世の中に五万といるでしょう。その中で運に恵まれた人だけが成功を手にしているのだと。
さて、運について議論しても仕方がないので具体的にどのような企業が世界のトップになれているのか。世界のトップに躍り出るためには努力や才能といった抽象的な要素ではなく具体的に何が必要なのか。それは、?商品の差別化、?大きなビジョン、?世界展開、?好感度の高さ、?垂直統合、?AI、?キャリアの拍付け、?地の利、だということです。
これらの細かな説明を本記事で扱ってしまうと文字数がとんでもないことになってしまいますので割愛して書籍に任せます。ただこの8つの要素によって、安く資本が集められ、無駄なヘイトを買わないことで足を引っ張られず、他企業からの追随を免れること、が期待できます。中小企業診断士の対象は規模の小さな企業のため、安く資本が集められる点や無駄なヘイトを買わない等の、大企業特有の性質についてはあまり語られることがありません。ですが、中小企業のその先の発展を考える際には重要となる考え方です。
■商品が訴求すべきターゲット
世界的な起業家の多くは、ビジネスでの成功には低コストでの大規模化が必要だと口を揃えて言います。具体的には、クラウド化、仮想化、ネットワーク効果です。しかしこれはテクノロジー的な視点であって、本来の訴求ターゲットはもっと低次の、人間の本能的な体の部位に対して行なっています。その訴求対象の部位とは脳、心、性器です。
脳は合理的に判断を下します。例えば、まったく同じ商品がA店で1,000円、B店で800円だったとしたらA店で買います。インターネットショッピングで安い順に並べて一番上に出てきたものを購入した経験がある人も多いと思います。脳は単純に安いかどうかを天秤にかけて、一番お得な判断をしてくれます。とはいえ、時には合理的な判断をくださない状況もあります。
それは心を揺さぶられた場合です。時に人は合理的な判断をしないことがあります。人との繋がりをはじめとした、共感や愛という感情が出てきたケースです。同じ価格で、同じ品質だったとしても、好みのブランドや好意にしている店で購入したいという人は多くいらっしゃいます。他にも人に自慢したいとか、よく見られたい、といったーーいわゆる承認欲求や優越感ーー理由からインスタグラムのようなSNSに投稿するために非合理な選択をすることもあるでしょう。「理動という言葉はないが感動はある」というように、人は感情的な生き物です。心ーー感情が揺さぶられた場合は、脳の合理的な判断を覆すことが起こるわけです。
もう一つ人間の機能として重要なのが性器です。これは異性へのアピールと換言した方が分かりやすいでしょうか。
生物の本能として子孫繁栄があります。クジャクのオスは綺麗な羽でメスにアピールしますし、ウグイスは綺麗な鳴き声でメスにアピールします。これは人間も例外ではありません。遥か昔の狩猟時代に良きパートナー選びは生きるか死ぬかの死活問題でした。そこでより権力を持つ男性が異性にモテるようになりました。その時代にはより多くの獲物を射止めた男性がより多くの権力を持ち、異性を引き付けたことでしょう。それから時代が進んで貴族や武士の世の中になって富や武力を持つものが権力を持つ。そして現在の資本主義社会では富がある男性が権力を持つとされています。
つまり現代においては富を持つことがそのまま異性へのアピールとなるわけです。そこで所有物ーー特に身に着けるものを高価にしはじめる。そこには脳の合理性も心揺さぶられるわけでもなく、ただ単に異性に格好よく見せてモテたいという動機で購入に走ることになります。
■『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』を読んでみて
本書はニューヨーク大学スターン経営大学院の教授であるスコット・ギャロウェイの著書です。スコット教授は自身が連続起業家(シリアルアントレプレナー)であり、その過程でGAFAとビジネス上対峙したこともある実業家です。そのため、研究者や官僚のような頭だけで考えたような机上の空論とは違い、自身の経験に裏付けられたリアリティの高い議論を展開する点において、他の書籍とは一風変わっております。
GAFAというのはGoogle、Amazon、Facebook、Appleの頭文字をとったものです。世界の時価総額のトップに名を連ねるこれらの米国企業をヨハネの黙示録の四騎士に例えて、GAFAがなぜこれほどの力を得たのか、世界をどう支配してどう創り変えたのか、創り変えた世界で我々はどう生きるか、といった点を丁寧に解説されています。
本記事で紹介した成功のための8つの要素をすべて備えて、人間の脳、心、性器の3つのポイントをターゲットに的確に訴求している点も本書に詳しく述べられています。具体的には、GoogleとAmazonは脳に、Facebookは心に、Appleは性器をターゲットとしております。本記事を遡っていただいて、これらの企業名を思い浮かべながら読むと納得できるかと思います。
スコット教授はあまりGAFAに良いイメージを持たれていないようでかなり批判的な内容になっております。読み物としても非常に面白いので、皆さんにも是非とも読んでいただきたい一冊です。
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JUGEMテーマ:ビジネス
虎は死して皮を留め人は死して名を残す
「虎が死んだ後に立派な皮を残すように人は死後に名が残るような生き方をすべきである」という教訓です。ビル・ゲイツはWindowsを作り出し、スティーブ・ジョブズはiPhoneを作り出しました。それらは世の中を変えた誰しもが認める偉業で、おそらく後世にもその名が残ることでしょう。まさに教訓通りの生き方をしたと言えます。
偉業を残す人たちは素晴らしいですし、皆がそのような偉業を成すことができれば世界は益々発展するでしょう。資本主義の成功者はーー将来に目標をおいてそこに向かって日々邁進するべきだーーと口を揃えて言います。その意味するところはーー現在を犠牲にして将来を輝かしいものにしろーーということです。
モノが不足していて発展途上だった昔はそれで良かったかもしれませんが、逆に弊害になってしまっているのが現代。将来の目標が高過ぎるがゆえに、また、世間のプレッシャーが強いがゆえに、現在の自分と将来像にギャップがあり過ぎるためにストレスが溜まり、絶望し、沈んでゆく。
今回は、このようなストレス社会を生き抜くための考え方について議論しようと思います。
ちなみに、今現在モチベーションが高く、大きな偉業を達成したいという人には本記事は有用ではありません。むしろ、モチベーション低下にも繋がる恐れがあるのでご注意ください。
■そもそも偉業とは何か?
偉業と一言で言っても人によってその意味は多様で受け取り方もそれぞれです。
冒頭で述べた世界的に有名なビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズを上げる人もいますし、松下幸之助や孫正義、澤田秀雄のような日本国内の経営者。リオネル・メッシや大谷翔平のようなスポーツ選手。アルバート・アインシュタインや湯川秀樹のようなノーベル賞受賞者、将又ある分野だけで知られているような賞の受賞者もあり得ます。地域貢献をした市長や町長、もしかすると自分の祖父母や両親の名を出す人もいるかもしれません。
ここでご理解いただきたいことは、偉業といってもその種類は様々で、必ずしも世界的に直接影響を与えることだけが偉業だとは限らないということです。ビル・ゲイツが幼少の時にお世話になった近所のおじいさんの小さな親切は、ビル・ゲイツにとっては偉業になるかもしれません。スティーブ・ジョブズがカフェにいる時に聞こえてきた隣の人たちの会話が発想のヒントとなったとすれば、それもまた偉業となり得ます。
つまり、偉業というものは主観的なものであって、人によってその範囲も意味も異なります。自分の知らない人たちに喜ばれたとしても、あなたの身近な人には全く感謝されないような可能性だってあります。近所の公園を憩いの場としていて携帯電話を持っていないお爺さんにとってはiPhoneの発明よりも、公園の清掃や花壇の手入れをした方が感謝されるでしょう。近所に住んでいる野球に全く興味のない子供の面倒をみることは、子供にとっては大谷翔平よりも尊敬に値するでしょう。
多くの人には関係なくとも感謝されたい一人に感謝されること。それは立派な偉業です。今現在、大きなことをやろうとしていて、それがプレッシャーになっていたとすれば、今一度誰に感謝されるのか、を考えてみると良いかと思います
■果たして人の偉業は宇宙的にみたらどれほどの影響力なのか
さて、仮に人生をかけて世界的な偉業を達成したと仮定しましょう。それがどれほどの影響を持つでしょうか。
澤田秀雄がHISを創業したことで、それまで嗜好品だった旅行が庶民でも手が届くようになりました。ソフトバンクの登場によってこれまで高額だった携帯料金が大幅に下がり、ほぼすべての日本人が携帯電話を手にすることになりました。これらは世の中への素晴らしい貢献といえるでしょう。とはいえ、旅行に興味がない人や携帯電話を持たない人たちもいるわけです。そのような人たちにとってはあんまり影響はありません。
スティーブ・ジョブズがアップル社を一度追放されて、再び戻って来たことは有名な話です。彼がアップル社に復帰した際にこれからどうするかと聞かれて「We’re here to put a dent in the universe(宇宙をへこませる)」と語ったと言われています。そしてiPhoneという世の中を一変させる商品を世界に発信しました。
確かに地球に住む人類にとってiPhoneの登場は劇的なものでした。どこからでも情報にアクセスでき、SNSを通じて世界中の誰とでも即座にコミュニケーションができるようになりました。買い物に出かけるときも財布を持っていく必要はなく、スマホだけで十分な時代です。
しかし、地球上の人間以外の生物ーー例えば、ネコやイヌはiPhoneの存在を気にしていませんし、それによって自分たちの環境が変わったとも感じていないでしょう。さらに、地球は太陽系の極々一部であり、その太陽系も銀河系の一部。そして銀河の外には宇宙が広がっているわけです。地球というのは宇宙の末端の方に位置しているため、仮に宇宙大帝国みたいなものがあったとしても誰も気にしないほど瑣末な存在でしかありません。
再びジョブズの「We’re here to put a dent in the universe(宇宙をへこませる)」という言葉を思い返しましょう。彼は確かに地球上の人類規模ではへこませられたかもしれません。しかし、宇宙にとっては銀河系ですら取るに足らず、銀河系にとっては太陽系ですら取るに足らず、太陽系にとっては地球ですら取るに足らず。つまりはiPhoneの存在は宇宙にとっては全く取るに足らない発明ということです。
我々人類がどんなに偉業だと思っても、周囲の人たちにとっては影響を与えたとしても、宇宙規模で考えたら非常に虚しい事象でしかない。であれば、私たちが近所の人のため地域環境のために貢献するのと何が違うのか。iPhoneの発明は価値のあることですが、公園清掃のボランティアにも価値があります。人類規模でみたらそこには大きな違いがあるのですが、宇宙規模で見たらどちらも同じようなもの。
穿った見方をすれば、偉業というのは自己満足と承認欲求です。自己満足はともかく承認欲求は以前の記事( 人生に重要な3つの柱は「知恵」「決断力」「行動力」 )で紹介した通り弊害だらけです。であれば偉業に捉われずにできることをやれば良いのではないでしょうか。
■未来のために「今」を犠牲にする考えについて
偉業を成すことが悪いと主張したいのではありません。アルバート・アインシュタインは物理学に興味があって、その延長に光量子仮説や相対性理論があったのかもしれません。ライト兄弟は空を飛びたいという純粋な関心から飛行機を作ったのかもしれません。
近年のビジネスーー主に新規事業開拓においてでは「ペインポイント」という考え方があります。このペインポイントとは、顧客がコストをかけてでも解消したい課題のことをさします。ペインポイントを探し出し、その解消までの道のりをマイルストーンとして描いて日々の業務をこなしていく。つまりは、現在というのはペインポイントを解消するまでの過程であって、将来のために今を頑張っているということです。
確かにこの思考は新規事業を成功に導くためには無くてはならないものです。偉業を成し遂げたいという強い気持ちがあり、プロジェクト完遂までのモチベーションがあれば問題ないでしょう。そういう方々がいなければ新しい発明は世の中に出てこないのは確かです。
ですが、もしもツライと感じたら改めて偉業とは何かを考えてほしい。偉業から得られるのは自己満足と承認欲求です。今現在を犠牲にして、生涯をかけて大きなことを達成し、死ぬ間際になったときに自分の人生を振り返ったときにどう思うか。そこで満足を感じられれば良いのですが、虚しくなったら時すでに遅し。現実はゲームのようにセーブポイントから再開はできません。
これを回避する最良の方法は過程を楽しむこと。将来に囚われずに今現在を楽しみながら生きることです。その楽しんだ延長上に偉業を成し遂げられればベストですが、仮に何も成し遂げられなかったとしても、楽しんだ事実は自分の記憶に経験として残り続けます。
未来のために今を犠牲にするのは当たり前ではありません。今を楽しむことが第一で、その延長上に未来がある。今がなければ未来もない。常に頭に入れておきたいと思います。
■オリバー・バークマンの『限りある時間の使い方』を読んで
長い目でみれば、僕たちはみんな死んでいる
そんな書き出しからはじまり、生産性の罠について丁寧に説明しているのが本書です。全米のベストセラーにも選ばれたようで、それが最近日本語に和訳されたようです。
世に普及している「時間の使い方」を紹介するほとんどの本がタイムマネジメントに関する中、本書はタイムマネジメントに対して真っ向から否定しています。現実を直視し、幻想を捨て、好奇心を持つこと。ただそれだけで人生は有意義になると。
ストレス社会においては鬱病が蔓延り、最悪自殺する人もいます。心療内科や精神科医といったところは予約で数ヶ月先まで受診できないような現状です。確かに偉業を成し遂げることは素晴らしいことですが、そのために自分自身が病んでしまっては元も子もありません。
そんな時は宇宙がどんなに広大で、周囲への貢献だけでも十分に自分の役割を達成したんだと実感できれば良いと考える。無理難題をこなす必要はありません。小さな成果でもコツコツやれば大きな成果に繋がりますし、何よりも自分ができることで貢献すれば良いですから。
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JUGEMテーマ:検定試験にむけて
JUGEMテーマ:行政書士試験
■はじめに
社労士試験が終わってから、何か面白そうな試験はないかと調べてたら11月に行政書士試験があることを知りました。9月から10月の上旬までは何かと準備があったので勉強する時間を確保できず、実質1ヶ月の勉強期間になりそうでしたが、たとえ不合格になっても来年再度受験すればいいや、という軽い気持ちで受験申し込みをしました。
■概要
行政書士とは、官公庁に提出する書類作成および提出、またその相談などを行なう業務独占資格です。行政書士試験は、その業務に必要な憲法や民法、行政法などの知識を問う試験となります。試験範囲を詳細にすると「憲法」「行政法」「民法」「商法・会社法」そして「基礎法学」「一般常識」から出題されます。
以前は比較的取得が容易な資格とされていたようですが、近年は資格保有者数や受験者数の増加に伴い、中小企業診断士や社会保険労務士などと肩を並べるほどの難関試験となっています。
また「もっとも稼げない資格」のように言われることも多い行政書士試験ですが、使い方次第だと思います。行政書士は「街の法律家」とも言われるように、日常生活上関係してくる民法や商法の専門的な知識を取得することができます。後見人や相続、土地所有権問題、さらに会社設立事項などを知っておくことは、自分がその立場になった際に役立つ知識だと思います。
■試験結果
・期間:30日(勉強時間 100 時間)
・費用:18,232円(受験料7,000円、参考書代等11,232円)
・得点:208点(300点満点中180点以上で合格 ただし、法令等科目の合計点122点以上、一般知識等科目の得点24点以上)
)
(内訳)
〇法令等
5肢択一式:128点
多肢選択式:18点
記述式 :22点
〇一般知識等
5肢択一式:40点
今年は記念受験のつもりでしたので、試験後に自己採点は一切しませんでした。合格発表の当日に郵便ポストを確認したら一通の葉書が入っており「やっぱり不合格だったか」と思いました。概して、合格の場合は合格書類が同封されている場合が多いので書留とか大きな封筒で郵送されてくることが多いからです。
得点だけ確認しようと中を開いてみたら、まさかの合格。しかも合格最低点をそこそこ上回ってました。非常に嬉しかったですね。これだから難関試験受験はやめられません(笑)
■計画
勉強期間が1ヶ月しかないので最小限の学習に絞らなければなりません。記念受験といっても、ただ不合格になっても仕方がありません。少なくとも1ヶ月は試験に注力するわけで、合格率4割程度には持っていきたいのですよね。
まずはインターネットにて情報収集開始…… と行きたいのですが、今回は書店に直行しました。そこで行政書士試験コーナーに行って唯一おかれていたのが「スッキリわかる行政書士シリーズ」。手に取って中をパラパラめくるとイラストが多くて初学者でも取り付けそう。その場でインターネットで調べても悪い噂はなかったですし、個人的に日商簿記2級ではスッキリシリーズにお世話になっていることもあって、早速購入を決めました。この場で購入したのはスッキリわかる行政書士シリーズのテキストと頻出過去問題集のみです。
次にインターネットで調べたところ、テキストや過去問だけでは不十分なことを知りました。特に、行政書士試験では民法と行政法の配点が非常に高い! ということで伊藤塾の「うかる! 行政書士 民法・行政法 解法スキル完全マスター」を補助教材として購入。
また、頻出過去問題集だけでは不安を覚えて演習量を増やすために早稲田経営出版の「合格革命 行政書士 一問一答式 出るとこ千問ノック」。さらに、記述式対策として「合格革命 行政書士 40字記述式・多肢選択式問題集」を購入しました。
他のサイトで「行政書士試験の勉強をするのに行政書士試験の参考書を購入しても受からない」との情報がありまして、司法書士試験や国家公務員試験の問題集を紹介しているところもありました。しかし、司法書士試験の民法の範囲は行政書士をかなりオーバーしておりますし、国家公務員試験も試験範囲にズレがあります。ですので、素直に行政書士試験のテキスト・問題集だけで挑みました。
さらに、判例集や条文集は使わないことにしました。というのも、これらは読むのが苦痛…… 私は文字を淡々と読むのが非常に嫌いなのです(笑) それゆえ、テキストや問題集の中で出てきたものを覚えていくことにしました。たとえ判例を知らなかったり条文を覚えていなくても、法律知識を使って読み取れば正答できることも多いとの意見をいくつか見ましたしね。
そして、一般常識は足切りが存在するので怖いといえば怖いのですが、試験日まで1ヶ月しかありません。何が出るのか分からないのであれば自分の知識を信じるしかないので、自分の知識外、書籍外の問題が出たら諦めて切り捨てることにしました。これまでに中小企業診断士、日商簿記、社会保険労務士の学習をしてきてるし、そしてIT系は専門なので多分大丈夫でしょう(笑)
あとですねー、憲法については書籍を買わずに「憲法をわかりやすく」のサイトを利用しました。サイト運営者様は法学部出身の方のようで、対話形式で憲法を非常に分かりやすく説明してくれます。書籍を読む前にこのサイトを読んだ方が効率が良いと思いますが、自分は勉強の途中に当該サイトを知ったのでスッキリシリーズを終わらせた後に使わせていただきました。
特に憲法の重要判例についてはイラストで説明してくれるので判例集よりも理解しやすいと思います。
以上よりまとめると使用する書籍は5冊、参考サイト1つ。そして、判例集は買わず、条文も読みません(大事なことなので2度書きました)。
具体的なスケジュールは以下の通り。
1.「スッキリわかる行政書士シリーズ」頻出過去問題集を3周
2.「スッキリわかる行政書士シリーズ」テキストを3周
3.「憲法をわかりやすく」を1読
4.「うかる! 行政書士 民法・行政法 解法スキル完全マスター」を3周
5.「合格革命 行政書士 一問一答式 出るとこ千問ノック」を3周
6.「合格革命 行政書士 40字記述式・多肢選択式問題集」を3周
7.書籍5冊の総復習
1〜7を1ヶ月で終わらせることになります。先にも書きましたが、3のインターネットサイトは一番初めに読んだ方がいいと思います。法律の頂点に立つ憲法を初めに知ることで各法律の理解が早く進むと思いますので。
■実行
まずは頻出過去問題集から。
進め方は、問題を読んですぐに解説を読みます。いきなり学習を開始して過去問を解けるはずがありません。そんな感じで基礎法学と憲法を終わらせます。丁度この頃、衆議院選挙があったので内閣の機能などは非常に興味深かった。特に、解散後の初総選挙だったので最高裁判所裁判官の投票もあったという。
ここで気をつけることは天皇、内閣、国会、議院、裁判所の役割を1つ1つ丁寧に覚える必要はないということです。問題に出てきたものだけを覚えてください。そうでないと全然先に進みません。各役割については学習を進めていくうちに自然と覚えていくことになります。
あ、でも衆議院と参議院の違いは抑えておいた方がいいです。衆議院には内閣不信任請求権と予算の先議権があって、参議院には緊急集会を開く権限がある、のように。
憲法の次が大変だった…… 行政法です。もう行政強制とか行政審査不服法とか行政事件訴訟法って一体全体何なの?? という(笑)
もうひたすら解説を覚えていくしかありません。行政法は取りあえず分かった気になって進めましょう。行政審査不服法と行政事件訴訟法がゴッチャになると思いますが、徐々に違いが分かっていけばいいのです。どうせ伊藤塾の本で再度より詳しく学ぶことになるわけなので。
その次がこれまた大変でした(泣) もう本当に勉強が嫌になりましたね。はい、民法です。
私は中小企業診断士試験をクリアしていたので、この分野は全く初学者ではありませんでした。そのため、心裡留保とか詐欺とか強迫等の用語には困りませんでした。しかし、一番大変なのはそこじゃなかった。
債権者代位権と詐害行為取消権の違いとか、売り主の担保責任とか、抵当権とか…… もう行政法と同じで民法も分かった気になって先に進めました。どうせ後で伊藤塾の(以下略
相続のところは興味があったので楽に進められたのが救いでした。特に遺言状のところは直近関係しそうなところなので念入りに学習しました!
次が商法・会社法。
まぁこの商法・会社法の分野は配点低いし、最悪は捨ててもいい。中小企業診断士や簿記で学んだところだからサクサクっと。株主総会の普通決議、特別決議、特殊決議の定足数とか頭から抜け出てたので覚え直す感じでしたね。細かい数字なんてどうでもいいじゃんね?
法律が終わると次は多肢選択式。この分野は判例からの出題が多いという特徴があります。
ここの進め方も問題文読んですぐに解説読めば大体理解できると思います。特にこのスッキリシリーズは判例知識がなくても文脈と選択肢から正解を絞り込む方法が説明されてるのが良いですね。星の数ほどある判例を片っ端から覚えるよりも国語力を駆使した方が現実的でしょう。
そして記述式。
記述式は如何に適切なキーワードを使いこなせているか。今までの択一式や選択式の応用ともいえる分野です。他サイトで「記述式は全捨てでいい」と書かれているところもありましたが、それもあながち間違いではありません。おそらく記述式の学習を捨てても合格圏内に入ることは可能でしょう。が、ここにきて行政書士試験の面白みに気がついてしまいました。
基礎知識を応用して与えられた訴訟を読み解く、というのはとても面白いですよね。単なる法律の丸暗記ではなく、暗記した知識を適切な事件にあてはめ、しかも適切な文字数以内にまとめるという行政書士に絶対的に必要な能力。
まぁ、こんなのは合格してからやればいいんですが、この記述式でこれまで淡々とこなしていた暗記作業がとても楽しくなりモチベーションが一気にあがりました。
頻出過去問題集にある最後の一般常識は適当に覚えればよいでしょう。
この問題集に載ってるのは膨大な試験範囲の中から一部を抽出したものでしかないので、これを全部覚えたとしても本試験で出ることはまずないでしょう。それこそ砂浜から1粒の砂金を探し当てるようなもの。この分野にこだわる必要はないでしょう。
頻出過去問題集を3周ほど終わらせた後で、テキストに移ります。
テキストも馬鹿正直に初めから読んではいけません。テキストはまず章ごとの確認ミニテストをやってから、確認として本文を読むこと。これを実践すれば3周はすぐに終わります。
このテキストを進めながら頻出過去問題集で理解があやふやだったところの知識保管になりました。特に民法の債権あたりはイラストが載ってたので分かりやすかったです。
スッキリシリーズが終わり、ここからインターネットサイト「憲法をわかりやすく」での憲法理解。
結構ボリュームがあるのですが、面白いのでサクサク進みました。エホバの証人事件とか、重要判例も文章で読むよりよっぽど分かり易かった。
ここで恥ずかしながら初めて憲法が人権を守るためのものだという一般常識を知りました。逆に言えば、このレベルでも行政書士試験に受かることができるということです!
そして一番重い伊藤塾の民法と行政法の本。率直に言って難しい。本自体は薄いんだけどねぇ……
本書の構成は演習問題を解きながら理解していくというものなので初めから順番に読んで、ポイントごとの問題を解いていけばOK。いきなりこの本からはじめると挫折しそうですが、スッキリシリーズである程度知識はついているので、全く理解できないということはないでしょう。
1周目で理解できなくても最低3周は読むので、分かりづらいところがあっても気にせずに進みましょう。これも3周こなします。
さて、ここまで学習した時点で知識だけ考えれば合格レベルに達していると思います。しかし、演習量が圧倒的に足らない。ということで一問一答で演習量を増やします。スッキリシリーズや伊藤塾とは違った出版社による書籍なので、問われる論点も当然違います。このように1つの出版社に絞らないことで幅広い勉強ができます。1つの出版社に絞ると各書籍の連携が取れているので、それはそれで利点はあるんですけどね。
この本は大体3日くらいで1周終わりました。3周繰り返します。
最後に記述式の特訓。丁度早稲田出版の記述式本には多肢選択式問題も含まれてるので、これにて全ての試験形式の演習をこなせることになります。試験日が近づいてきたため少し頑張った結果、2日で1周目が終わりました。記述式は設問のキーワードに反応して、適切なキーワードをあてはめられるようになるための訓練です。もう初めてきく用語はないでしょう。3周終わらせます。
試験日前日に去年の過去問を時間を計測して解きました。普通に解いていって時間が余ることが分かれば十分です。過去問を解いて時間が余らなかった、もしくは時間ギリギリの場合は解くペースを少し早めにすると良いでしょう。練習で試験時間ギリギリだと本番試験では時間内に終わることはできません。そもそも去年の問題はテキストや問題集でも何問かみているので本番よりも早く解けて当然です。
昨年度の問題の採点はしませんでした。過去問から全く同じ問題が出題されることがほとんどないことが知り、本番でかなりの応用力が試されることが分かったので、昨年度の問題を完璧にしても仕方がないと考えたからです。
最後に、全部のテキスト・問題集を解き直し、出来なかったところや気になったところに付箋をペタペタ貼りました。
今回は日商簿記2級の合格体験記です。
働きながらの受験でしたが1ヶ月かけずして合格できました。応用情報技術者試験の直後でしたので、この2ヶ月間は休む暇もなく試験を受けていました。応用情報技術者試験の結果が出ていなかったので多少気になってはいましたが、受け終わってしまった試験のことを気にしても仕方がないので日商簿記試験だけ考えて集中しました。
試験日から合格発表日まで1ヶ月と長かったのですが、 厳しめの自己採点で丁度70点でしたので応用情報技術者試験ほど心臓に悪くはありませんでした(笑)
■概要
日商簿記2級は、試験を主催している商工会議所では以下のように説明されています。
経営管理に役立つ知識として、最も企業に求められる資格の一つ。企業の財務担当者に必須。
高度な商業簿記・工業簿記(初歩的な原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できる。
高校(商業高校)において修得を期待するレベル。
https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2 より
資格試験の公式ホームページには企業の財務担当者に必須とありますが、一般の社会人にも勧められる資格です。
会社勤めの方であれば経費申請の際に勘定項目を記入することもありますし、計算機の使い方に慣れることも日々の業務で役立つことが多々あります。
また、経営管理に少しでも触れられるので、コスト意識を持つことができます。特に会社勤めの社会人はコストを意識することが少ないと思います。実際に「減価償却」という用語を説明できない人は非常に多いのが現状です。会社では経営に近くなればなるほどコスト意識は必要になり、ある意味管理職以上は必須であるともいえます。
ですので、出世していきたい人には是非とも取得していただきたい資格です。
日商簿記試験は4級から1級までありますが、筆者は一般的に評価されるのが2級以上ということもあって3級を受けずに2級から受験しました。 日商2級から受験するにしても、3級の知識を前提に出題されるため3級からはじめることになります。
■試験結果
■計画
いつも通り、試験勉強をはじめる前にインターネットで調査しました。その結果、以下のことが分かりました。
注目すべきは工業簿記です。出題パターンが少ないということは、全てのパターンを理解してしまえば、 毎回満点近く取れるということです。 つまり工業簿記で満点(40点)を取れれば、商業簿記は半分の30点だけ取れば合格できる ことになります。
具体的に立てた計画を以下に記載します。前述した通り、2級は3級の知識を前提に出題されます。そこで、はじめの1週間は3級の勉強をしました。
利用した参考書はサクッとシリーズ。絵が多く、1日の学習量ごとに項目が分かれており、簿記初心者にはおススメとの声が多かったからです。なお、サクッとシリーズ以外ではスッキリシリーズもおススメします。筆者は日商簿記の講師をする際には、サクッとシリーズではなくスッキリシリーズを利用しています。
スッキリシリーズの特徴は、サクッとシリーズより本が厚くボリュームが多いので、ある程度学習に時間を要します。が、絵が多く、項目ごとに非常に丁寧に説明しているため、ボリュームの割りには苦も無く進めることができます。巻末にも問題が多く載っているので、演習量も問題なくこなせます。
さて、具体的に立てた計画を以下に記載します。はじめの1週間は3級の勉強をしました。サクッとシリーズを選択された方は、以下スッキリシリーズをサクッとシリーズに読み替えてください。
【3級】
・1日目〜2日目
「スッキリわかる日商簿記3級商業簿記 テキスト」の1周目
・3日目〜6日目
「合格するための本試験問題集 日商簿記3級 (よくわかる簿記シリーズ)」の1周目
・7日目
休息
【2級】
・8日目〜10日目
「スッキリわかる日商2級商業簿記テキスト」の1周目
・11日目〜12日目
「スッキリわかる日商2級工業簿記テキスト」の1周目
・13日目〜18日目
「合格するための本試験問題集 日商簿記2級 (よくわかる簿記シリーズ)」の1周目
この1周目で分からなかった問題のみをチェック
【3級・2級】
・19日目〜21日目
3級のテキスト、2級のテキストを復習し、2級過去問題集については1周目にチェックした問題だけを解答
■実行
計画通りに3級のテキストは2日で読み終えました。 本来は1週間かける本のようですがボリュームが少ないため1週間もかかりません。 3級で理解が難しいのは減価償却費と貸倒引当金でしょうか。普通に社会人をしている際には、馴染みの薄い内容のせいか、つまづく人が多いようです。減価償却に関しては、ファイナンシャルプランナーなどの関連資格を取得している人には理解しやすいかもしれませんが、具体的な計算まで踏み込むことはないため、計算方法については反復学習する必要があります。
簡単な講義資料をまとめましたので、興味のある方は以下のリンクをご確認ください。
3日目から過去問題集に取り組み、ここから電卓を使い始めました。 過去問を解く際に意識したことは、必ず書いて問題を解くことです。 簿記試験は暗記というよりはむしろ大学受験の数学のように解法の流れを覚える試験です。 読んで理解しようとしてもなかなか身につかないので、 電車乗車時などの隙間時間を活用しづらいため他資格と比べて勉強が大変でした。
そこで過去問を解く際には、特に時間を測ることはせず、大問ごとに区切って学習を進めました。朝の電車内では第1問を実際に書くことはせずに読むだけで頭の中で仕訳を行ない、 帰りの電車では座席に座れるよう帰宅時間を合わせ、問題集のコピーを膝の上やカバンの上に広げながら書いて解きました。
ちなみに3級過去問題集は全て解かず、ある程度理解できたところで切り上げました。なぜなら、過去問を6回分ほど解いた時点で70点以上とれるようになり、2級に進める準備が整ったからです。目的は2級に受かることであり、3級試験に合格することではありません。ですので、3級の過去問を完璧にする必要は全くありません。
2級に関しても商業簿記テキスト、工業簿記テキスト、過去問題集は全て計画通りに進みました。
商業簿記に関しては、株式や社債等の株式会社ならではの仕訳が加わります。そして、工業簿記自体3級では出題されないため、ゼロから知識をつけることになります。
これらは一見、難しそうに思えますが、テキスト内にイラスト付きで詳しく説明されているため、ジックリ読んで、演習と解いているうちに理解できるようになっていきます。
注意すべき点は、分からないところは時間をかけても構わないのでシッカリと理解することです。幸いインターネット上には情報が溢れています。イラストや動画で説明しているサイトも数多くあります。苦手なところは、文字だけでなく、イラストや動画のようなイメージを交えて理解すると良いです。
19日目から3級テキストと2級テキストの復習を開始しました。その際、本文は一切読まずに練習問題だけ解きました(スッキリシリーズでは巻末の練習問題)。分からなかった問題のみを付箋等でチェックし、もう一度その章の解説を見直し、解けなかった問題に関しては3回解けるまで繰り返しました。
2級過去問題集については過去試験12回分、全て解けるようになるまで繰り返すことを意識して本番に挑みました。
■本試験
試験会場は明治大学の和泉キャンパスでした。京王線の明大前駅から出ると、受験生がゾロゾロ同じ方向に向かっていきましたので、迷うことなく到着することができました。年間十万人を超えるマンモス試験だけあって、部屋数も多い。それだけトイレも混むといういうことなので、早めにトイレは済ませた方が良いです。
余談ですが、簿記試験というか商工会議所の主催する試験では気をつけるべきことがあります。それは……
この試験は例外なく途中退出ができません。 つまり、トイレ休憩ができないということです
試験会場到着時にトイレに行っていたのにも関わらず、試験開始直後にトイレに行きたくなったので、尿意を耐えながらの地獄の2時間でした。 朝コーヒーを2杯も飲むんじゃなかった……
また、鉛筆削りも使用禁止ですので、鉛筆を使用する人は気をつけましょう(隣の人が注意されていました)。
閑話休題、本番は「第一問→第二問→第四問→第五問→第三問」の順番で解きました。
この順番にした理由は、時間のかからない問題をはじめに解くためです。特に、第三問は財務諸表作成問題や精算表作成問題などが出題されるため非常に時間がかかります。第三問が終わったら残り10分しか残ってなかった、という事態も十分にあり得ます。同様に第五問も原価計算のため時間がかかります。そこで、比較的容易に解ける第一問、第二問、第四問を先に解くという戦略です。
実際に私が受験したときには、第五問が終わって第三問に取り掛かる時点でかなり時間に余裕ができていたため焦らず解けたので、結果的にこの順番は成功だったと思います。
もうひとつ気をつける点としては、第三問に精算表が出題された場合、貸方と借方が合わなかったからといって焦ってはいけません。精算表はところどころ加点ポイントがあるため、合計金額が誤っていたとしても、加点ポイントの欄が正解していれば部分点をもらえます。実際に、筆者は借方と貸方が合いませんでしたが、それまでの過程が正解していたため、第三問では6割以上得点することができました。
ですので、時間があれば焦らずに一つ一つ丁寧に見直しし、少しでも加点ポイントで得点するように減点を回避するのが賢明です。
■総評
簿記試験は隙間時間を利用しづらい試験のためかなり大変でした。一般的に合格までに6ヶ月かかると言われているようですが、綿密な計画を立てて、ひたすら紙・ペン・電卓で反復練習すれば1ヶ月以内で十分受かることができる試験です。
また、一般的に「2級の商業簿記は3級からの流れである程度解けるので工業簿記が難しい」と言われているようですが、 問題パターンの少ない工業簿記は安定して得点できます。商業簿記でどれだけ点を削られるかが合否を分ける試験であると思います。
以下、紹介した書籍
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今回受験した試験は、難関資格と言われる中小企業診断士試験です。
他のサイトをみていただくと分かりますが、この試験の合格までの平均勉強時間は1000時間と言われています。しかし、その4分の1の時間で十分合格できました。応用情報技術者試験の時も思ったのですが、平均勉強時間は相当多めに算出されている気がします。
試験の概要から合格体験記まで書くため記事が長くなりそうですので項目で区切って順番に説明していきます。使用したテキスト等は記事最下部にまとめて配置しました。こう並べてみると随分勉強したなぁ、と思います(笑)。
■概要
まず、本資格取得のためには1次試験から実務補習まで終了する必要があります。
・1次試験 マークシート
・2次試験 筆記試験
・最終試験 口述試験
・実務補習
このようにマークシートから口述試験までバラエティに富んだ1年に1度行われる長丁場の試験です
この試験は1次試験から最終試験まで1発合格する必要はありません。1次試験は合格すると2年間免除されます。つまり、1次試験に合格した年とその次の年の2回までは2次試験から受けられることになります。この試験の性質上、1発合格の難易度は相当上がります。なぜなら、1年前の1次試験合格組は1年間2次試験の勉強だけに集中でき、この合格組と1次試験から2次試験の間の約2ヶ月半の勉強期間だけで勝たなければならないからです。さらに、合格率は年によってバラつきがありますが、1次試験が約20%、2次試験も約20%ですので、1発合格率は20%×20%=4%となり計算上約4%となります。最後の口述試験についてはほとんど落ちることはない、ということですので2次試験が山場であるといえます。ちなみに口述試験に落ちた場合は、再度2次試験を合格しなければなりません。この時、1次試験免除で2回目に2次試験を合格した場合は、1次試験からの受験となってしまいます。実務補習は「中小企業診断士第2次試験に合格後、3年以内に実務補習を15日以上受けるか、診断実務に15日以上従事することにより、中小企業診断士としての登録を行うこと」とあります。実務補習の日程は診断士協会で定められているため、社会人は有給を使わなければならないでしょう。
私の場合は同じ試験を何年も受けるのが嫌なので、1次試験は1発合格を目標に全科目受験することに決めました。しかし、独占業務が存在しない試験ということもあり、早期に取得するメリットがそこまで大きくないこと。また、何度も1次試験を受けることで確かな知識にするという目的から、敢えて長期間で合格するように計画するのも選択肢の一つです。実際に、1発合格した中小企業診断士は知識が曖昧で使えないというケースも多いようです。
■合格基準
本試験は科目免除制度があるのですが、免除した場合は60点扱いになります。そして合格基準が「総点数(7科目なので700点)の60%(60点)以上であって、かつ1科目でも40%(40点)未満のないこと」です。例えば、科目合格や科目免除によって4科目受験する場合、総得点(400点)の60%(240点)以上であって、かつ1科目でも(40点)未満のないこと、になります。免除する科目は得意科目であることが多いので、免除できるけれどもあえて免除せずに総得点を上げるという選択もできます。しかし、私は以下の3つの理由から以前取得した応用情報技術者による科目免除を選択しました。
?苦手科目を重点的に学習したかったこと
?当年に難化した際に得点稼ぎに使えないこと
?免除科目の試験時間中に他科目の勉強をできること
?に関しては資格取得と同時に知識習得も目的だったため、?は今年の経済学のように極度に難化した場合に得意科目でも稼げなくなるため、?は特に暗記科目の直前の際に詰め込みができるためです。本試験では経営情報システムの次が暗記科目である中小企業経営・中小企業政策ですので、迷わず科目免除を選択しました。
■試験結果
8月の第1週の土日に中小企業診断士の1次試験を受けました。
過去の記事を読んでいただければ分かる通り、この試験だけの勉強をしていたわけではありません。ですので、勉強期間は長かったのですが、平日1日1時間くらいで少しずつ進めたのでトータルの勉強時間はそんなに多くありません。1日2時間やれば約4ヶ月で受かりますし、頑張って平日1日5時間勉強して土日もつぶして休日8時間くらい勉強すれば、2ヶ月ほどで受かる可能性もあると思います。そういえば久しぶりに本格的な国家試験を受けた気がします。
いつも通り過去の試験と同様に試験合格点ギリギリでした。最低限の努力で合格点に達するというのが私のポリシーですので、今回も思惑通りになりました。
・期間:8ヶ月(勉強時間 250 時間)
・費用:49,320円(受験料13,000円、参考書代等36,320円)
・得点 424点(700満点中420点以上で合格)
経済学・経済政策 52点
財務・会計 67点
企業経営理論 59点
運営管理 62点
経営法務 62点
経営情報システム 60点(※免除したため60点として計算)
中小企業経営・政策 62点
■計画
まず、インターネットで情報収集です。
勉強方法が詳しく書かれている独学合格のサイトがあまりなかったので調査対象が少なく、信頼できる情報の取得に苦労しました。主に「中小企業診断士 資格試験体験記」様を参考にしました。そして、独学の合格体験記でTACのテキストだけで合格したという書き込みを多く見つけたので、上記サイト通りTACのテキスト・問題集・過去問を購入しました。
12月から勉強をはじめたので、かなり試験まで時間があったため1日に1時間程度を目安に進めました。勉強方法のまとめを以下に記載します。
1.問題集・テキスト 全科目が終わるまで(a)〜(c)を繰り返す
(a). 問題集を完璧に仕上げる
(b). テキストを1回読む
(c). 次の科目へ
2.全科目の問題集・テキスト総復習
3.全科目の過去問題集
4.全科目のテキスト、問題集、過去問題集の総復習
今回、過去問から取り組まなかったのは以下の理由からです。
?中小企業診断士試験の知識をしっかりと習得しようとしたから
?TACの問題集からはじめて合格したという体験記が多くあったから
また、勉強する順番は以下のように決めました。
この順番にした理由は各科目ごとの勉強方法の時に説明します。
1.企業経営理論
2.経済学・経済政策
3.中小企業経営・中小企業政策
4.運営管理
5.経営法務
6.財務・会計
自分の場合は使用する参考書、問題集に関してはインターネットを参考にしますが、勉強方法は独自の仕方で行ないました。テキストからはじめているサイトも多かったのですが、私は今回もテキストから読むことはせずに問題集から取り組みました。なぜなら、自身の経験上最短で合格するのにもっとも効率の良い方法はまず演習をすることだからです。
■実行
ここからは科目ごとに書いていきます。
自分の場合は応用情報技術者を取得していたので、経営情報システムは免除しました。したがって、残りの6科目について科目別に書いていきます。ちなみに、この試験の前に簿記3級、ITパスポート、販売士2級を取得しておくと、財務・会計、経営情報システム、運営管理の理解が早くなるようです。どれも比較的容易に取得できるため、試験まで1年くらいあるのであれば取得しておいて損はないと思います。また、ITストラテジストは同様のコンサル資格として出題範囲が大きくかぶっていますので、同時に受験するとシナジー効果が得られます。
なお、日商簿記2級、販売士1級、ITパスポート、応用情報技術者、ITストラテジストの合格体験記は以下のリンクからご確認いただけます。筆者は中小企業診断士を初受験した時には、上記の内日商簿記2級、ITパスポート、応用情報技術者を取得しておりました。他資格は後日取得したものです。
日商簿記2級 独学1発合格 〜勉強時間: 50時間〜
販売士検定試験1級 独学1発合格 〜勉強時間:50時間〜 (現:リテール・マーケティング検定試験)
ITパスポート試験 独学1発合格 〜勉強時間: 10時間〜
応用情報技術者試験(AP) 独学1発合格 〜勉強時間: 50時間〜
ITストラテジスト 独学1発合格 〜勉強時間:12時間 実務経験無し〜
●問題集・テキスト
【企業経営理論】
試験前年の12月から開始しました。
本試験の中核であり、2次試験にも一番影響する、ということで最初に取り組みました。
初めに取り組むことで、もう一度全科目を見直すまでの期間が開くため、より長期記憶に残るという目論見もありました。
例えば、1ヶ月後に見直すと1ヶ月後は覚えていても、3ヶ月後のように期間がさらに開くと忘れることがあります。1次試験まで8ヶ月、2次試験まで12ヶ月もあるので、2次試験まで記憶を残しておくためには、復習までの期間を長くする必要があります。
※詳しくは忘却曲線で検索してください
【経済学・経営政策】
1月から開始しました。
事前に学習に時間がかかるという情報を得ていたため、2科目めにもってきました。
早速問題集を解きはじめましたが、予想以上に1問1問に時間がかかりました。解説を読んでも分かり辛い問題も多く、何回読んでも分からないところは飛ばしました。
問題集を終えるまでに2ヶ月かかり、その後テキストを1回読みました。テキスト一読後に、問題集に戻り問題集の説明だけでは分からなかった問題を再度解きました。テキストと問題集を行き来することで、すべての問題を理解することができましたが、合計3ヶ月かかりました。予想以上にハードな科目でした。
【中小企業経営・中小企業政策】
4月から開始しました。
次にこの科目を3科目めに選んだ理由を以下に記載します。
?残りの科目の中では一番自信がなかったから
?思考を問う経済学の直後だったので、暗記科目をしたかったから
問題集から解いていきましたが、経済学と比べて暗記科目なため、特に止まることなくスムーズに進みました。ただし、私自身暗記科目が好きではないため、相当苦痛でした……
似たような名前の政策の細かな融資金額や期間など、切り分けて覚えなければならないことが盛りだくさんでした。運転資金と設備資金で貸与期間が違うことや、単純に貸与期間だけでなく据置期間まで分けられてたことがさらに暗記を大変にしていました。
【運営管理】
5月から開始しました。
残りの科目の中で、もっともテキスト・問題集が厚かったので、最後の方にもって行きたくなかったという理由から運営管理を4科目めに選びました。
問題集を解いていくと…… 面白い! 特に後半の店舗設計はハマりました。スーパーやコンビニ等に行く際にも建物の外観や内装に目が行くようになり、色々な発見をしながら知識を確かなものにしていくことができました。
8月が本試験にも関わらず、5月の時点で手をつけていない科目があと2つも残っており、また過去問にも一切触れていなかったため、3週間で終わらせました。
【経営法務】
試験までの期間が短くなってきたため、5月の第4週から財務・会計と同時に開始しました。
電車の中では経営法務をし、机の上等で財務・会計をするようにしました。
法律は初めて学ぶため、基本用語(善意や悪意など)すら分からない状態でしたが、インターネットを参考にしながら、地道に進めました。この科目も中小企業経営・中小企業政策のように、細かい任期を問う問題などがあったので、切り分けて覚えるのが大変でした。
かなり急いで勉強したため、財務・会計とともに3週間で終わりました。
【財務・会計】
経営法務と同時スタートしました。
簿記2級を取得していたため、多少なりとも自信があったので最後に回しました。しかし、実際に取り組んでみると、簿記とはかなり出題範囲が違うことに気が付きます。例えば、簿記2級においては「どの勘定が流動資産で固定資産か」ということに関してはそこまで触れられませんし、NPVなどの企業価値に関する問題は出題されません。なので、問題集に載っている問題数が少ないこともあって、急遽「中小企業診断士 集中特訓 財務・会計 計算問題集」を購入しました。ただし、精算表や損益分岐点などに関しては簿記より簡単なため、初学者と比べて勉強することが少なくなった点は有利でした。
なんとか3週間で終わって経営法務と同時に終わり、6月の第3週めから各科目の総復習に入ることができました。
●問題集・テキスト総復習
企業経営理論の問題集からもう一度すべての科目を解きなおします。各問題集→各テキストの一読→次の科目へ、というサイクルで進めました。
この時点で解ける問題は試験日まで覚えているだろうということで、解けなかった問題にのみ付箋をつけていきました。……すると、約半年間が空いたこともあって、ほとんどすべての問題に付箋がついてしまいました。しかし、過去に一度は理解している問題なので、解説を読めばすぐに理解できたため、再度問題集を解きはじめてからすべて解けるようになるまで1科目あたり3日くらいで完了しました。
過去問を終えた後に、再度この段階で分からなかった問題をやり直そうとしたため、付箋は外さずに解けた問題に関しては付箋にシャープペンでチェックを入れていきました。
こんな調子で全6科目終わるまで3週間かかりました。すでに7月に入っており、試験日まで約1ヶ月となっていました。ここまで過去問を一度も解いていなかったので、かなり焦りました。
●過去問題集
去年の試験問題は試験前の力試しとして試験1週間前に解くと決めていたため、一昨年以前4年分の過去問を古い順に解きはじめました。
過去問を解きはじめて思ったことが、スピード問題集よりかなり難しい。実際、試験1ヶ月前の時点でほとんど解けませんでした。過去問題集にはスピードテキストに載っていない問題も多く、本当にTACシリーズだけで大丈夫か? とも思いました。しかし、基礎知識はついていたためか、解説を読めばすんなりと理解できる問題が多く、1科目あたり4年分を3日程度で全問題終えられました。何年分か解くにつれ、出題のパターンを把握するようになったため、一昨年の過去問を解く頃には6割はいかずとも、ある程度解けるようにはなっていました。
全科目を1周終えるまでに3週間かかり、7月の第4週目に突入しました。過去問の全問題をもう一度解き直し、分からない問題だけに付箋をつけました。全科目に付箋をつけた後に付箋のついた問題だけをもう一度解き直し、すべての付箋に正解のチェックがつくまで繰り返しました。
この作業を終えるまでに1週間かかりました。
●テキスト、問題集、過去問題集の総復習
テスト1週間前の土日を使い、昨年の過去問を解きました。
結果はちょうど6割くらいでした。間違った問題だけに復習のための付箋をつけました。
試験週の月曜日から付箋がついている問題だけを問題集から順番に解いていき、解けたと同時にどんどん付箋を外していきました。すべての付箋が外れた後に、各科目のテキストで自信のないところだけに付箋を貼って重点的に読みました。
この作業が終わるまでに3日かかりました。
●中小企業白書の購入
テストまで残り3日となった時点で、中小企業経営・中小企業政策に関して足切りをくらうかもしれないという不安に駆られました。
もう一度この科目について調べると「TACのテキストだけでは難しい」という意見がちらほらありました。前年度の中小企業白書と今年の施策ガイドブックを入手すると良いという情報を、インターネットや知人からのアドバイスを受け、前年度の「中小企業白書」を購入しました。毎年、試験問題を作成する頃には最新版の中小企業白書が完成していないためか、最新版からは2、3問しか出題されていないようです。施策ガイドブックに関しては商工会議所などでもらえるようでしたが、政策に関しては今年からそこまで制度が変わるとも思えず、スピードテキストの内容だけで勝負しようと決めました。
中小企業白書がAmazonから翌日届き、その日からスピードテキストと見比べながら進めました。白書の中小企業政策の直前までを2日間で1周読み終えることができ、試験日までひたすら中小企業白書を読みまくりました。試験日までに3周ほど読めました。
■本試験
試験は土日に行われました。試験日程は以下のようになっています。
・1日目
1限目 経済学・経済政策 60分
2限目 財務・会計 60分
3限目 企業経営理論 90分
4限目 運営管理 90分
・2日目
1限目 経営法務 60分
2限目 経営情報システム 60分
3限目 中小企業経営・中小企業政策 90分
1日目のはじめが経済学・経済政策と財務・会計というのが一般受験生にはきついようです(経済学と財務会計を苦手としている受験生は多いようなので)。私は経済学と財務会計を得点源としようとしていたので、特に焦ることもなく落ち着いて試験に挑むことができました。
試験会場は市ヶ谷でした。
当日は、筆記用具、時計、受験票、と1日目の科目のテキストを持っていきました。テキストは各科目の前に付箋のついている箇所を見直すためです。いつも通り、電車の遅延などで当日に焦るのは嫌なので、試験開始1時間前までに会場に着くようにしました。
1限目の経済学が開始しました。
1問目から解いていこうとすると…………………………………………………………………………………………………… 全然分からない。次から次へとわけの分からない問題が襲い掛かってきました。去年こんなに難しかったっけ??
全問題を30分ほどで解き切り、絶望しました。
しかし、諦めるのもバカバカしいので再度1問目から見ていきました。思いっきり頭をフル回転させ、解き直した時には、はじめに書いた答えを半分くらい訂正しました。
そこで試験終了。「不合格か……」という絶望的な気分になり、科目合格だけでも取ろうと思い、休み時間に次の財務会計のテキストを見直しました。
次の財務会計は経済学とは正反対で、異常なほど簡単でした。過去5年で一番簡単だったのではないでしょうか。
全問題解いた後に時間があまり(財務会計で時間があまることはまずあり得ないようです)、計算問題を検算し、時間終了まで待ちました。
企業経営理論は、相変わらず手応えがないというか何というか。
自信を持って解けた問題はほとんどなく2択まで絞って、あとは雰囲気で答えた問題が多かったので、少々不安でした。
1日目最終日は運営管理です。
この科目も企業経営理論に似たような感じで、自信を持って解けた問題はほとんどありませんでした。時間が余ったので、最終科目ということもあって、10分残して途中退出しました(試験に最後まで残ると会場を出るのに時間がかかり、帰りの電車も混むので)。
1日目の午後にはTACから「経済学・経済政策」と「財務・会計」に関しては解答速報が出ていたので、おそるおそる採点しました。その結果、経済学52点(TACの経済学22問の解答が公式と違っていたため実際は48点)、財務会計7割弱でした。財務会計に関しては相当自信があったのですがケアレスミス(数量差異って書かれているのに価格差異と数量差異の合計を求めてしまったり……)などもあり、予想以上に点数が伸びませんでした。
2日目は経営法務からです。
この科目も例年と比べて簡単だったのではないでしょうか。「ゆるキャラの毛をむしって……」という面白い問題もあったことが記憶に残っています。暗記科目なので試験時間内に余裕で終わりましたが、他科目と同様に2択まで絞れた問題が多く、そんなに自信はありませんでした。
2限目は科目免除だったため、
最終科目の試験開始まで中小企業白書とテキストを見直しました。試験3日前から集中的に勉強したため、この科目にも自信をもてるようになりました。
中小企業経営・中小企業政策も暗記科目なので、他の科目同様にかなり時間が残ったため、丁寧に見直した後に途中退室しました
全然自信がないまま、数日後に全科目の解答が配点とともに中小企業診断士のサイトに掲載されました。
自己採点をしてみると、足切り科目はなしで、6割ちょうどでした。1問でもマークミスがあったら落ちるという状態でした。しかし、毎年中小企業診断士試験では没問があるということなので、気にはなりましたが、気持ちを切り替えることにしました。
翌月合格発表が行われ、1次試験合格者一覧の中に私の受験番号がありました。合格発表と同時に得点調整が行われようで、受験者全員に経済学に4点追加されたようです。難しすぎると思ったよ……
■総評
試験を振り返ると、ちょうど合格率が20%前後になるように上手く調節されてることを実感しました。試験問題を分析してみると、以下のようになりました。
・常識で解ける問題が1割
・テキストなどでしっかり勉強していれば分かる問題が1割
・2択まで絞り込める問題が8割(つまり、確率では4割とれる計算)
市販されている参考書などで勉強すれば1+1+4=6でギリギリ6割に届くように作られている感じです。おそらく合格までの平均勉強時間の1000時間かけてしっかりと勉強すれば安定して合格できると思います。
2次試験の合格体験記は以下のリンクから飛べます。
最後に。
経歴を掲載した方が良いとのご意見をいただいたので、私の経歴に関しては「スカイプ家庭教師」をご確認ください。以下、要望があったため合格証も掲載いたします。スマホでの撮影のため画像が荒いので、後日改めてスキャナー画像に変更します。
以下、本記事で紹介した書籍
・中小企業診断士 最速合格のためのスピードテキスト(1) 企業経営理論
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WHOが出した統計によると日本人の平均寿命は84.3歳です。
両親や祖父母の寿命を考える時、そして自身の寿命を考える時、平均寿命を基準にする人は多いかと思われます。特に近年は平均寿命と合わせて健康寿命を意識する人も増えているようです。
「隣のおじいちゃんは不摂生な生活をしているのに平均寿命を超えた」「うちのおばあちゃんは平均寿命を10歳もオーバーしてる」のように考えたことがある人は是非再考してもらいたい。果たして、その寿命は本当に『平均』を超えているのかどうか。
平均とは予測値ではなく実測値です。現在という"点"における観測から導かれた数値ということです。我々は現在を生きていますが、過去から未来へと流れる時の中で人生を送ります。果たして現在という定点で観測された値を基準にして良いのだろうか。
そういった疑問を抱きつつ、本記事ではこれからの人生設計をどうやって見直し、自分のもっている資産を改めて棚卸ししてみてる。そして、新たに再設計された人生の中で所有資産をどう磨いて、どう生かしていけば良いか、について議論をしていきたいと思います。
■人生設計の見直し
皆さんは縄文時代の人類の平均寿命をご存知でしょうか。近年のデータによると縄文時代は男女ともに平均寿命が31歳程度でした。これが室町時代には36歳まで少しずつ伸び、江戸時代には40歳を超え、昭和20年頃には52歳となりました。そこから高度経済成長期を迎えて昭和後期には一気に75歳を突破し、そこからなだらかに上がり続けて令和には80歳をオーバーしました。
国連や内閣府によると2060年には女性の平均寿命が90歳を超えると推定されているようです。2000年頃に生まれた世代は高い確率で100歳以上まで長生きするというのには驚きです。つまり、人間の寿命は今のところ右肩上がりになっていて、どこが上限なのか探っているような状況となっています。
さて、話を元に戻しますが、今現在の平均寿命を参考に、私たちの寿命を推定することに意味はあるのでしょうか。その答えは「ノー」と言わざるを得ないでしょう。なぜならば、今現在の平均寿命とは、これまでに亡くなった方の平均寿命ということであり、その元データには平均寿命が50歳程度だった昭和初期の方々も入っているからです。
平均寿命が上がるということは単なる出来事ではなく、すべての人々に影響を及ぼす事象です。どういうことかというと、日本を含む多くの国々で年金という制度が採用されています。日本においては65歳で仕事を引退し、その後は年金を受給することで健康で文化的な最低限度の生活が保障されています。この年金設計に平均寿命の伸びがほとんど考慮されていない点が大問題です。
年金制度はネズミ講のようなものでして、若い世代になればなるほど崩壊していきます。もしあなたが年金制度をあてにして、65歳定年を信じて人生設計をしているとなると、実際に定年を迎えた際に多くの誤算が生じてしまいます。その時に受給される年金額は今の半額かもしれませんし、受給年齢が大幅に上がって85歳で受給開始となる怖れだってあります。
仮に年金が85歳受給スタートになった場合にどうなるのか、といったシミュレーションを他人事ではなく自分事として捉えて実施してみると、置かれている状況がいかに危機的で、政府ともどもあまりにも危機感がないことが見えてきます。
先に説明した通り、我々はすでに65歳定年の世の中ではなく100年時代の人生に突入しています。当然に人生設計を柔軟に変えていかなければなりません。これまでのような、20歳までは勉学に励み、65歳までひたすら仕事をして働き、その後は年金を受給して余生を楽しむ、という古い型を捨てる必要があります。
85歳から年金受給がはじまる世の中になったとすると、今より20年長く働く、収入を維持する仕組みを作る、もしくは蓄えをもっておく、のような選択を取らざるをえません。ほとんどの人は20年長く働く選択をすることになるかと思います。しかし、近年の技術進歩を考えると、長く働き続けるためには知識と技術のアップデートは欠かせません。20歳以降もどこかで腰を据えてジックリと勉強するフェーズを取り入れたり、時代に乗り遅れないよう働きながらでも定期的に自己を磨き続けなければなりません。
今でこそ業務時間外に学習することが他人と差別化を図ることに繋がっていますが、これからの時代は皆そうせざるを得なくなるということです。そこで、増えた20年間を生き抜くためには具体的にどうするかという話を次に進めていきましょう。
■あらゆる種類の『資産』にバランスよく投資
資産と聞いてまず思いつくのは、現金や不動産のような有形資産でしょうか。このような有形資産を多く蓄えておくことは100年時代において今よりも重要になってきます。
しかし、資産は何も有形資産だけではありません。物理的な形をもたない無形資産も存在します。無形資産ではじめに思いつきそうなのは知識や技術といった仕事の生産性を高める生産性資産でしょうか。これらは自己研鑽を通じて磨くことができます。特に、仕事以外の時間を有効活用することも視野に入れて、かつグローバルを見据えた観点で実施することが肝要です。
他の無形資産で思いつくものがあるか、次に読み進める前に今ここで少し考えてみてください。
どうでしょうか。財務に強い人は貸借対照表(BS)を参考にしたかもしれません。が、残念ながら貸借対照表は有形資産が多くを占めており、無形資産に関しても先ほど紹介した技術を端とするような知的財産しか載りません。それは財務諸表が数値化できるものに限定されているという特徴でもあるからです。
閑話休題、他の無形資産としては、健康や家族、友人関係などが挙げられます。あまりに当たり前すぎて普段特に意識していない人もいるかもしれませんが、これらは間違いなく資産として計上すべきです。健康、家族、友人関係は人生の幸福度をあげる原動力ともなる活力資産です。
健康でなければ人生を楽しめませんし、そもそも有形資産を生み出すこともできません。家族や友達が支えてくれるからこそ、日々を生きるモチベーションに繋がります。健康も家族も友達も維持し続けるためには、放置せず継続的に投資しなければ目減りしてしまいます。つまり、これらは資産としての性質を十分に持ち合わせているといえるでしょう。
これらを維持するためにはバランスのとれた食事や適度な運動、家族や友人との付き合いを疎かにしない習慣をつけること。よくやってしまう過ちとして、仕事を最重視するあまりにこれらの資産を蔑ろにしてしまう。確かに生産性資産は重要ですが、それと同じくらい活力資産も重要だという認識をする。特に、友達とセミナーや勉強会を実施するといったシナジー効果も利用しつつ、効率良く研鑽するのもおススメです。
最後の無形資産としては、知己と多様性のある交友関係です。知己と多様性のある交友関係の目的は変化に応じた柔軟な切り替えをスムーズにするため、不確実な状況への適応力のための変身資産ともいうべきものです。
知己とは、自身のアイデンティティを保つこと。周りから揺さぶられようがシッカリとした軸をもって自立すること。そして変化を受け入れる柔軟な思考も重要です。一般的に歳をとるにつれて変化を嫌う傾向があります。そこで、自分が何者かを改めて考えたり、新しい物事に常に触れられる環境を作ったり、若い世代との話し合える場を設けたりすることが肝要になります。
また、気の合う仲間以外の多様性ある交友関係にも注力すべきです。人は普通に生活していると趣味が合う、考え方が似通ったグループに属してしまいます。小学校や中学校、高校での友人関係を思い出してください。クラスの中にはいくつかのグループができますが、それぞれのグループが干渉することはあまり無かったのではないでしょうか。よほど意識して別グループへのアクションを起こさない限り、各グループが独立するよう振る舞っていたかと思われます。
つまり、多様性のある交友関係を作るためには、それなりの行動を起こす必要があるということです。具体的には、別コミュニティの勉強会に参加したり、友達から友達の紹介を受けたり、そもそも所属組織を変えることも考えられます。
ひとつの資産だけでなく、以上のような有形/無形資産にバランスよく投資することが求められる時代になってくることは意識しておいた方が良いでしょう。
■Lynda Gratton(リンダ・グラットン)著の「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略」を読んで
本記事の内容についてより詳細にデータをみながら理解したい方には、リンダ・グラットンの通称「ライフシフト」をお勧めします。本書は、学生から社会人まで幅広く読んでいただきたい良書です。
新しく何かをはじめる際に、40歳/50歳の人で「もう少し若かったら勉強したのに」とおっしゃる方がいらっしゃいます。私もこれまでに何度か耳にしています。しかし、ライフシフトの考えに触れると、40歳や50歳というのはまだまだ若い。これからの100年時代においてまだまだ人生の半分でしかありませんから。
むしろ40歳なんかはこれから転換の時期を迎えるべきで、新たに人生を再設計し、スキルの棚卸しを実施し、資産に投資すべき世代です。
何かを学ぶのに遅すぎるということはない
スタンリー・ボールドウィンの有名な言葉の通り、人生のどのステージにおいても学ぶ姿勢を忘れずに、常に自分を磨きつつ投資していきたいものです。
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現状を抜け出して何とかしたい。
そう考えて資格受験を決心する人は少なからずいらっしゃるかと思われます。しかし、勉強が習慣になっている方や、よほど計画性があり且つ意志の強い方以外は、中々勉強を長く続けることが難しいかと思います。現実問題として人は変化を嫌います。頭では変化をしたいと考える人は多いのですが、実際に行動に移すとなると面倒くさくなって現状を維持してしまう。これはある種人間の習性でもあって抗いづらいものなのかもしれません。
そういった場合に「ご褒美を設定する」「目標を細分化する」「隙間時間を活用する」といったアドバイスがありがちです。しかし、これらは結局は自身の意志が前提となっていて継続実行できず、役に立たなかったと感じる人も多いのではないでしょうか。その結果、三日坊主で終わってしまい何も変われない。
そこで本記事では本人の意志というよりは、人の本能に訴えかけたり、環境から勉強せざるを得ない状況を作ったりする、という観点で勉強を続ける方法について議論していきたいと思います。ポイントは、返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、権威、好意、希少性です。
●返報性
まずは返報性です。
返報性とは、人が何かしらの恩を受けた際には恩を受けたままにしておけず、恩を返さなければ申し訳なく感じる、といった人間の本能のことです。
例えば、隣人からお土産を頂いたり、手伝ったりして貰った場合に、次はその人のために何かしてあげたいと思うような時に返報性の原理が働いたといえます。企業が展示場で配るアメニティや、デパ地下こと百貨店内のスーパー等での試食サービスも返報性を利用したマーケティングです。何かを貰ったら施し返すーーこの場合は、商品を購入することが返報ーーという心理を利用しているわけです。
これをどう勉強に生かすかといえば、何かしらの好意と自分を強引に結び付けてしまいます。
友達や家族に何か買って貰ったり、世話を焼いて貰った場合は、その恩に報いるよう合格で返す、といったような感じです。特に家族の場合は、親を対象にするのが良いでしょう。子供自慢をしたがる親であれば猶更です。
●コミットメントと一貫性
次はコミットメントと一貫性についてです。
コミットメントとは、約束をする、責任をもつ、といった意味です。つまり「自分で〇〇を達成します」宣言してしまえば良い。特に、自主的で、行動を伴い、努力を要し、公知することがコミットメントをする上で重要だと考えられています。
そして一貫性は、話の筋が通っていて論理的であることです。言ってることに一貫性がない人は信用されない傾向にあるのはみなさんも実感していると思います。面接では、この一貫性を確認していることが多く、つまりは一貫性がある人は評価が高いということです。さらに先に進んで、話していることと行動していることが一貫していると更に評価が高くなります。
例えば、自ら学習計画を作ってSNS等で宣言し、その通りに実行し、日々の成果をSNSで書き込む。ここには自主的、行動、努力、公知というコミットメントのすべての要素が詰まっていることに注目です。こういったことを実践することでコミットメントを有利に働かせることができそうです。また、宣言した通りに実践しなければならないという点において一貫性の原理も利用できます。
●社会的証明
次は社会的証明についてです。
社会的証明とは、自分の判断よりも多数である他人の判断を信じ、それに従った行動をしてしまう心理です。
いわゆる"さくら"やお笑い番組で流れる録音された笑い声も社会的証明を利用したものです。しかも興味深いことに、ほとんどの人がさくらや録音された笑い声に良い印象を持っていないにも関わらず、その効力に屈服してしまっているという。それほどまでに強い力とも言えるわけです。
この力を使うには、勉強する環境に身を置いてしまうことがまず考えられます。資格学校を使うメリットはこういった所にあるんですが、少しでもお金を節約したい場合は図書館に通うのも良いでしょう。私の場合は、近所に図書館と公共の自習スペースがありましたので、そういった施設を利用しています。
お金も極力使いたくないし、自習は難しいと考える人は、SNSで勉強仲間を募るのも良いアイデアです。同じ志を持つ仲間同士で定期的に集まって学習することで、社会的証明を利用しながら勉強を習慣化することが期待できます。
●権威
さて権威についてです。
権威とはいわゆる肩書きのことで、大学教授や医師や弁護士のような専門家、加えてハーバード大学卒や東京大学卒といった世の中で優秀と思われている肩書きを使った心理トリックです。
テレビでは頻繁に専門家が登場します。そして内容の裏付けを専門家自身に話してもらうことで説得力をもたそうとしています。本来は専門家自身に話してもらう必要はなく、立証されているデータや論文をソースとともに明示しさえすれば、誰が話しても違いはないはずです。もちろん、そのデータを作った本人や論文の著者であれば、信用度をあげることに貢献できるでしょうが、多くの場合は本人ではなく似たような研究をしている専門家です。
本屋に足を運んでも「ハーバード大学の教室で〜」「スタンフォード発の〜」「東大生が書いた〜」のようなタイトルを多くみかけます。これも権威の力を利用したマーケティングです。本来は内容が良ければ評価されるはずなんですが、それでは星の数ほどある書籍の中に埋もれてしまう。そこで大学名をタイトルに使うことで手に取ってもらう確率を上げようという目論見です。
ここで重要になるのが「誰が言ったかではなく、何を言ったかが重要」という思考です。肩書に惑わされずに内容だけを判断して評価する癖をつけることで権威の力に騙されなくなるでしょう。
さて、権威を勉強に応用しようとなると中々難しい。逆に変な書籍を掴まされてしまう恐れもあります。つまり、ここに関しては利用するというよりも自己防衛で活用すべきです。書店に行ってもタイトルに惑わされずに内容で評価すること。塾や家庭教師を頼むにしても肩書きよりも、その人のブログや実績で判断する。可能であれば一度話して色々と聞いてみるのが良いでしょう。
大学受験では東大理?の家庭教師の単価が他と比べて異常に高いのですが、これも権威の力によるものです。東大理?だからといって必ずしも教え方が上手いわけではありません。そもそも講師は生徒の質問に当意即妙で答える必要はありません。生徒の質問を受けてからジックリと解法を考え、次にどうやって説明したら分かりやすいかを資料にまとめ、生徒のレベルに合わせて丁寧に解説できるスキルがより求められます。生徒に質問にすぐに答えられる"権威の強い"先生よりも、生徒のレベルに合わせて適切な説明をできる先生の方が講師としては優秀です。
●好意
次は好意です。
好意とは、好意を向けられた相手に対して好意を返したくなるという心理です。返報性にも似たような話ですし、好意にこれ以上踏み込んでも勉強に役立つことは難しそうなので、今回は割愛します。
●希少性
最後に希少性です。
希少性とは、希少なものに価値を感じる心理です。
数量限定セールなどを思い浮かべれば分かりやすいでしょうか。たとえその商品やサービスを欲しくなかったとしても、それを手に入れることが困難になってくるにつれて欲しくなってくる心理です。
難関資格は合格率が低いので希少性は高いですし、あまり知られていない資格や受験までのハードルが高いような資格も希少性は高くなります。特に、希望する資格がなくて、自己研鑽をしたい場合等は、希少性の高い資格を視野に入れてみるのも良いかもしれません。
■『影響力の武器』を読んでみて
以上、心理学を逆手に取った勉強法について議論してきました。
本記事は多くの部分を『影響力の武器』という書籍を参考に書いています。こちらは米国を代表する社会心理学者のロバート・B・チャルディーニが、多くの文献と自身の経験から、人々が日々晒されている影響力の力をまとめた書籍となっています。1984年に初版が刊行されて以来、世界的なベストセラーとなりました。そして2014年に第三版として改定されてからもロングセラーとなり続けている名著です。
本の中では、日々我々が晒されている影響力の力が紹介され、それをどう回避すれば良いかについて丁寧に説明されています。防衛策はそれぞれの影響において異なりますが、基本的な考え方としては、パターンを理解しておいて、アンテナを張っておき、そのアンテナに引っかかったら思考を開始する。といったことを意識しておく必要があるといったような。
現在は昔と比べてどんどんスピードが求められる時代になっています。それにつれて迅速な判断が求められることも多くなります。人間の脳には処理できる限界量があって、情報過多の現代においては全ての物事について一つ一つ丁寧に判断していくことはできません。そこで、多くの人は思考の近道を使って、右から来たものをそのまま左へ流すように処理する思考のパターンを作っています。
情報フレアともいうべき、毎日我々に降り注ぐ情報の粒に対してひとつひとつ対応するのは不可能です。しかし、危険な粒だけをマーキングし、それだけを回避するようにすれば、かなりの労力を割くことができるでしょう。その思考パターンを悪用することが横行しているのが現状です。逆にその思考パターンを逆手にとって、自分に有利に働かすことができれば、強い原動力にもなり得ます。ぜひ影響力の武器を有利に働かせて、勉強の習慣を勝ち取っていきたいものです。
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知り合いが一発で合格したのに自分は何回やっても不合格。そういった時に、嫉妬心や自虐心から怒り苦しみ、それだけではなく合格した人の邪魔をしたり、社会から離れて鬱病になって引きこもってしまったりする人がいます。一方で知り合いの合格を素直に喜び、それを目標に頑張れる人もいます。
現代においては前者のような人が少なからずいます。引きこもりになるのは自身の問題だけですむかもしれませんが、邪魔をするような人は自身だけの問題にとどまりません。よく言われる足の引っ張り合いというのはまさにそれでしょう。自分ばかりが休みを取れないのにあの人は休んでいて納得がいかないとか、あの人ばかり人気があってズルいとか、金持ちからもっと多くの税金を取るべきだとか、列挙したらキリがありませんが全て典型的な足を引っ張る思考です。
他人は他人、自分は自分。他人が得しようが損しようが自分には関係ない。そう考えられる人が多ければ足の引っ張り合いなど起こるはずもなく、無駄なストレスを感じることも少なくなり、現代のようにここまでストレスに苦しんで自殺者が増えるような状況にはなり得ないでしょう。出る杭は打たれない世の中になってもっと経済発展していた可能性もあります。
人は社会的な生き物であるがゆえか、どうしてか他人に興味を持ってしまう。幸か不幸か、良い方にも悪い方にも影響されてしまいます。興味を持つことが悪いのではなく興味の持ち方が悪い。そしてそれが人生の幸福度に大きく影響してしまいます。では、どのように考えていけば人生の幸福度を高められるのか、が本記事の議題です。
■原因論から目的論からへ
何か問題が生じたときに原因を追及する人が多いと思います。確かに仕事などのプロジェクトにおいて同じ問題を発生させないために原因を特定し、今後再発しないような体制を作ることは必要です。しかし、こと自分自身に起こっている問題についてこの思考は得策ではありません。なぜならば、原因思考では現状を打開する可能性を失くしてしまうからです。これを原因論とでも呼びましょうか。そこで新たに出てくるのが目的に焦点を置いた目的論です。
原因論と目的論の違いを理解するために、引きこもりの人がなぜ外に出られないのかを例に考えてみましょう。
原因論では、過去の虐待やいじめといったトラウマによる不安があるという原因がゆえに、家から出られないという結果をもたらしたと考えます。一方で、目的論であれば、外に出たくないという目的がはじめにあり、それを満たすために過去のトラウマを引き出して不安という感情を作り出していると考えます。
この場合、原因論では引きこもりは治すことができない不治の病となってしまいます。引きこもりの原因である過去は変えることが不可能なので、その過去がある限り一生引きこもりから脱することはできないという帰結です。しかし、目的論で考えるのであれば問題を解決することが可能です。目的論ではあくまでも外に出たくないという目的があって、それを実現するための手段としてトラウマを持ち出しているにすぎないと考えます。つまり、外に出たくないという目的さえ変えてしまえば引きこもりは治るということ。
ここで、なぜわざわざ引きこもりになりたいのかと疑問を持つ人がいるかもしれません。引きこもっていた方が楽だし、現状を変えるほどの気力がない、とか色々と考えられそうです。が、本当の原因なんて本人にしか分からないので、そんなことを考察しても仕方がありません。引きこもりになるという目的があって、その手段としてトラウマを持ち出した。だから目的を変えればいい。それで十分でしょう。
■承認欲求がある限り他人の人生を生きることになる
承認欲求とは、他人から認められたいという欲求のことです。マズローの欲求五段階説をご存知であれば、第四段階目に位置するアレです。
承認欲求は、例えば、親から褒められたいから有名大学に合格する、上司から認められたいから成果を出す、といったもので一見するとプラスに働くようにも見えます。実際にマズローの欲求五段階説でも承認欲求は満たすべきものとして位置づけられています。よく考えてほしいのは、承認欲求の行き着くところは他者の期待を満たすことです。他者の期待を満たした後で、果たして自分の元来やりたいことを満たすように柔軟に切り替えできるでしょうか。いえ、おそらく承認欲求を満たした後は、今度は他者の期待を裏切らないように期待に応え続けることに躍起になってしまうでしょう。つまり、承認されることで更なる承認を求めていってしまう。その結果、自分自身が消えてしまい、他者の期待通りの人生を生きてしまうことになりかねない。現在においてマズローの説はすでに古く過去の遺物でしかない。
あなたはあなたの人生を歩んでいるのであって、他者の人生を歩んでいるわけではない。承認を得られた結果、その他者に好かれることで自身も満足を感じられるというのであれば構いません。ですがそうでない人は歳をとってから人生を振り返ったときに、他者の期待通りに生きていたと気づいた時にどう感じるでしょうか。それで良い人生だったと満足できれば良いのですが、自分が本当にやりたかったことをできなかったことに気がついた時に、すでに手遅れだと感じた時の喪失感は想像に難しくありません。
また、承認欲求の弊害として劣等感によるコンプレックスがあります。他者の期待に応えられず、身近な誰かがその期待に応えたことによって、あたかも自分が劣っているかのように感じて塞ぎ込んでしまうような状況です。ドラマとかで見るような優秀な兄と比較されて自己嫌悪になる弟のようなシチュエーションです。そもそも自分は自分、他人は他人なので、劣等感はあったとしてもそれをコンプレックスとして受け止める必要はないはずです。これも元をたどれば他者を意識しすぎたがゆえに生じた弊害ともいえるでしょう。
自分自身の為に生きようとするならば承認欲求を捨て去ること。非常に重要なポイントです。
■自分がコントロールできる範囲とできない範囲を切り分ける
世の中には、自分でコントロールできるものとできないものがあります。例えば、自分が何に興味を持つか、相手をどう思うか、といった自分の考え方。また、本棚の本を処分したり、家をどう改造したり、といった自分の所有している物であれば思うようにコントロールすることができます。
一方で、相手の考え方や自分が所有していない物についてはコントロールの範囲外となります。そして、どうやら多くの人は、この自分では変えられないものをどうにかしてコントロールしようとしてしまう。相手の考え方を変えようとすることで悲劇が起こります。自分の希望や期待、要求、主張を相手に訴えかけ、頷かせようとするケースです。もし頷かないとしたら意地でも納得させようと躍起になり、時には周囲の第三者を利用し、あの手この手で相手を屈服させようとする。これは相手からしたら余計なおせっかいであり、自分の領域を他者に侵害されたと感じてもおかしくありません。
相手の考え方を変えることはできませんが、相手を屈服させようとする自分の考え方は変えることができます。自分が変えられるところは変えて、変えられないところは相手の決断に委ねる。このような、どこまで介入してどこから介入しないかを「課題の分離」と言います。そういった思考をした方が相手も自分もお互いにハッピーになれるでしょう。
しかし、よくある問題は、自分がコントロールできないにも関わらず、コントロールできるものだと誤解しているケースです。
以前、親の期待した通りに子供が育たないことがTwitterで話題になっていました。その時、ホリエモンこと堀江貴文さんは親が子供にできることは金銭的援助のみと話されておりました。まさにその通りで、親と子供はそれぞれ違った人間であり期待を押し付けてはいけない。親ができることと子供が自分自身で責任をもってやることをシッカリと切り分けるべきでしょう。親は子供の所有物でもなければ、全く別の個人のためコントロールできるはずもありません。最終的にどう子供が育つかは子供の責任で決めるべきことなので、親がそこに介入すべきではないと考えるべきだということ。
自分がコントロールできないことに意識しても徒労に終わることが多いし、無駄なストレスが溜まり、主張の衝突を引き起こします。他人を変えようとしている人は、他人をコントロールしようとしているーー悪い言い方をすれば自己中心的だとも言えます。
■「嫌われる勇気」からアドラー心理学を学ぶ
冒頭の受験で合格した人に対してどう考えるか。ここまで議論してくれば自ずとどう反応すれば良いか分かるかと思います。まずあなたの中で他者の足を引っ張りたいという目的があって、その手段として嫉妬心や自虐心を生み出している。また、他人は他人、自分は自分なので劣等感によるコンプレックスを感じる必要もありません。受験は他人の期待に応えてするものではなく、自分自身のためにするものだからです。そして合格不合格は他者の課題であるため、そこに対して第三者であるあなたは関係ありません。あなたができることは、自分自身のタスクである勉強に注力し、合格できるよう努力すれば良いだけです。
これまで目的論から承認欲求の否定、課題の分離まで議論してきたような内容は、アドラーが提唱したアドラー心理学に基づいています。心理学というと胡散臭く感じる人もいるかもしれませんが、アドラー心理学は哲学の側面が大きい。
アドラーは法的に正しいとか道徳的にかく有れとか、そういう話をしているわけではなく、どう考え、どう行動すれば自分が幸せになれるかを議論しているに過ぎません。であれば、他人の主義/思想に真っ向から反対し、議論をした末に論破するような行動をとることには何の意味もない。誰かの意見に対して自分なりの考えはもっていい。ただし、その誰かの考えを変えようと努力するのは自分の幸福度を下げるだけなのですべきではないということです。
さて、これまでのことを踏まえて今後どう反応していけばよいのか。それは、知恵を磨いて、何が変えられなくて、何が変えられるかを理解する。変えられないことに対しては割り切り、変えられることを変える行動をする。つまり必要スキルは「知恵」「決断力」「行動力」の3つ。
以前「原因と結果の法則」という書籍を紹介したことがあります。一見すると原因よりも目的を重視しろと言っている本記事と相反する内容のような気もします。しかし、思い出してもらいたいのですが、原因と結果の法則というのは思考が人格を作り出し、人格を映し出す鏡が環境として現れる。すなわち「思考→人格→環境」ということでした。結局、自分自身が変わるしかないという本質は変わらず、深いところでは本記事と繋がっています。
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感情的になることで「得したか?」と問われて「得した」と自信をもって答える人はそんなに多くないのではないかと思います。かくいう私も感情的になった後は後悔ばかりで、あんまり得したという記憶はありません。感情がなかったら生きる意欲がなくなり自殺してしまうと主張する人もいるほど人は感情の生き物と言われます。「理動」はなく「感動」という言葉はあることから人間は理屈では動かないが感情では動く生き物であると説く人もいます。人はそれほどまで感情に左右されるのに、それがマイナスにしか働かないということに違和感を覚えます。もしも感情的になることで損にしかならないのであれば、どうして感情などというモノが存在するのか。
自分が子供の頃を振り返ってみるとあの頃はなんでも感情を外に出していたように思い出します。特になにかを我慢するわけでもなく本能で生きていたような感じでしょうか。そして学校に通うことで集団行動を学び、周りに迷惑をかけないようになっていく。自分勝手な行動をすれば先生に怒られたという人も多いでしょう。そういった環境の中で感情を抑えつける術を身につけていき徐々に童心を失う。高校を卒業する頃にはそれなりに感情を抑えた「大人」になって巣立っていく。思えば学校教育で学んできたのはすべて感情を抑える方法でした。それが学校教育の目的とする「大人」であると考えるとなんだか寂しくなりますが、感情は正義だと学んだ記憶は全くありません。
世の中の多くの人たちは理不尽があったら耐えるし、面白いことがあっても我慢するように感情を抑えて生きています。果たしてそれは幸せなことなのでしょうか。本来やりたいことを好きなだけやって嫌なことはやらない。そういった本能に従った方が楽しそうです。とはいえ子供のように感情を思いっきり出して頭にきている時は怒鳴り、痛い時は声に出して泣く、というわけにもいきません。その結果、自分の周りから人がどんどん離れていってしまうことになるのは容易に想像できます。そうではなく、自身の心の内から、そして自分を取り巻く外から与えられる感情の揺さぶりに対して、自分にプラスになるものについては感情を使い、マイナスになるものについては冷静に対応する。これは先天的な性格もあるかもしれませんが、後天的なスキル次第で何とでもなる、ということを認識できたのは一冊の書籍のおかげです。
その書籍については最後の方に紹介するとして。どうやら感情を上手にコントロールしてプラスに働かせていることに成功している人もいるのだとか。もしそんなことが可能であれば大きく人生が変わりそうな気がします。
以前「 『自省録』に学ぶ 〜感情をコントロールして人生を謳歌する〜 」の記事にてローマ帝国五賢帝の最後の皇帝であるマルクス・アウレリウス・アントニヌスが著した自省録を紹介しました。この自省録は感情的にならないためのメモとしてまとめられたものです。今回は感情的にならないようにするためではなく、そこからさらに進んで感情をコントロールすることについて議論していきたいと思います。
■大人と子供の違いとは
冒頭に子供の頃の話をあげたので、本題に入る前に少し大人と子供の違いについて考えてみます。肉体的には歳をとれば大人になったと言えるでしょうが精神的な観点でみるとそれらの境界線を引くのは中々考える必要がありそうです。思考力があるとか、知識があるとか、そういったことで測れるものでも無さそうです。
ひとつは自立しているということが挙げられるでしょうか。自分で生活するだけのお金を自分の力で稼いでいる。となると、テレビに出ている子役や、今の時代だと小学生YouTuberは大人となるのでしょう。逆に自分自身で稼げずに親からの仕送りに頼っている人は子供となるのかもしれません。とはいえこれについては本記事の論点とはズレてしまうので別の切口で見てみましょう。
子供はお腹が空けば泣くし、体のどこかに痛みや痒みを感じても泣きます。少しでも自分が不快に感じると感情を思いっきり出して泣くという手段に出るわけです。喜怒哀楽をすべて感情で表現し、喜べば高揚して手を叩くし、怒りが湧けば叫び暴力に訴え、哀しければ泣いて、楽しければ笑う。大人であれば泣いて感情に訴えることはありません。感情を外に見せずに自分でお腹を満たしたり、体の不調を治すように労わったりと、自身で解決手段をとるのが普通です。もし肉体的に大人に見える人が、お腹が空いたから泣くような状況をみれば殆どの人は子供だと感じるのではないでしょうか。
そのような感情を表に出さずにコントロールできるのが大人なのではないでしょうか。
■感情をコントロールすることの利点
感情のコントロールには多くの利点があります。例えば、困ったときに助けてもらえる仲間を作れることが挙げられます。例えば、気分屋と呼ばれる人と付き合いづらいと感じる人は多いと思います。初めのうちは付き合っていても周りの人からは少しずつ距離を置かれ、いづれ相手にしてくれる人は非常に少なくなることでしょう。気分屋の人はそれなりに自分一人で何でもできる人が多い傾向にあるようにも思えますが、ひとりだけでは解決が難しい問題に直面した際に、頼れる人が少ないのは大きなデメリットになり得ます。
次に、感情をコントロールできる人は騙されにくいという特徴もあります。世の中には人間の心理を揺さぶるようなトラップが複数ちりばめられています。オレオレ詐欺に代表される悪質な手法だけでなく、街角で目にする広告やテレビで流れてくるCM、さらには政府が打ち出す政策もすべて私たちの感情に訴えかけてきて正常な判断をできないよう罠を仕掛けてきます。
この罠を回避するには感情的にならずに論理的に判断できるようになる必要があります。感情的にならないかどうかは文系とか理系とか関係なくそもそも人間は感情的な生き物だということを理解した上で、どういった状況で、どういったアプローチをされるか、を事前に知っておくことで対応できます。論理的というのは理系出身だから得意とかではありません。むしろ自分を論理的だと思っている理系人間こそ感情的な人間が多いように思えます。
ここでいう論理的というのは、こういうケースではこういったアプローチをされるのでこういった対処法をする、というようなパターンを頭に中に入れて準備をしておくということです。なので、自分が理系出身者ほど論理派と思いこんで準備をせず、どんどん罠に嵌っていく傾向にあるので、より注意が必要になると考えております。
感情的にならないというだけで騙されないようにはなるのですがこれは盾と矛でいう自分を守るための盾です。感情をコントロールすることは行動力を高められるという矛の観点で非常に重要になります。多くの人は現状維持を臨みがちです。現状打破することがプラスになることを頭では分かっていても実行に移すモチベーションが湧かないという経験をした人も多いことでしょう。そこで、マンネリを突破する初動として感情を爆発させて一時的にヤル気になるといった手法が有効になります。
感情が湧き出たタイミングで行動するというのが多くの人が選ぶ道になるのでしょうが、感情をコントロールできると自分が好きなタイミングで行動できる点で大きなアドバンテージとなり得ます。企業が事業をはじめる際にSWOT分析と呼ばれるフレームワークを利用することが多いのですが、これは自分の強みを機会に投入することで新規事業をはじめるベンチャー企業にとって有効な戦略です。機会はいつもあるわけではないので、自分の好きなタイミングで、というのが非常に重要だということが分かるかと思います。
■行動経済学について学ぶ
大人になるとは感情をコントロールできるようになるということ。そして感情をコントロールすることで有利に生きていけるということを議論してきました。
「理」が勝ちすぎると軋み、「情」が勝ちすぎると緩む、という。頭では理解していても行動が伴わなければ何もはじめられない。一方で、ヤル気になっていても論理が伴わなくては続かない。つまり、理論と感情はお互いに補完関係になければならず、どちらか一方だけでは弱いということです。人間は「感情」で動き「論理」でその動きを正当化する生き物なので双方のバランス感覚を養うと強い。
先述した通り、世の中には感情を揺さぶってくるような外的要因が非常に多く、意識していないと気がつかずに感情に流されてしまっているというケースが多い。気分屋でなくても報道や広告、政策などの外からの働きかけによって引き起こされるのが恐ろしい。
これらに対応するのは事前にどのように揺さぶりをかけてくるか、その際にどのように対応したら良いか、を準備しておくことが重要になってきます。良くあるケースを事例として紹介し、その際の心がけを表してくれるのがマッテオ・モッテルリーニ著の「世界は感情で動く 行動経済学からみる脳のトラップ(Trappole Mentali)」です。
行動経済学という言葉を聞くことが多いと思いますが、その中でも本書を1冊読んでおけば問題ないと言えるほど本書はおススメです。350ページほどのボリュームにたくさんの事例とエビデンスや実験データが紹介されており、ただ箇条書きで説明されるよりも納得しながら読むことができると思います。ピーク・エンドの法則、フレーミング効果、アンカリング効果、バーナム効果、ハロー効果、など。知っていれば自分に得なように働かせ、他人から仕掛けられた場合は回避できるようにシッカリと知識をつけておきたいと思います。
書籍は知識をつけるには良い手段ですが、実行に移さなければ使いこなすことはできません。知識をインプットとして行動としてアウトプットする。このサイクルを回すことが重要なのです。
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1.100万円を投資すると確実に25万円値上がる
2.100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う
そんなウマい話があるかどうかはさておき、実際にこのような投資案件があったとした場合にあなたはどちらを選ぶでしょうか?
本質問に回答する前に次の状況をイメージしてください。
あなたは銀行に100万円の預金があります。老後資金2,000万円が必要な時代と言われていますが、これから働いて稼ぐにしてもそんなに貯められる気がしません。歳をとるにつれて出費も年々増えていくことも見込まれています。昔は銀行の定期預金の利息が良かったようですが、今の低金利の世の中では100万円につく利息はたかが知れています。
そんなある日「ピンポーン」。あなたの家のインターホンが鳴りました。革製の黒のカバンを手にして紺色のスーツを着こなした出で立ちの男性がカメラ越しに見えました。年齢は30歳ほどでしょうか。少しパーマのかかった黒色の短髪の下にうかがえる額に少し汗が浮かんでいました。普段から利用している大手銀行の担当者です。簡単な挨拶をしてたわいもない話をした後に彼は本題に入り「只今2つの投資案件があります」と。さらに続けて「1つめは100万円を投資すると確実に25万円値上がります。なので確実に25万円が増えることになります」
ここで「は?」と、胡散臭いと感じたあなたの感覚は正常です! しかし、そこを考えてしまうと本記事で話そうとしている議論を逸脱してしまうため、登場する銀行の担当者は詐欺ではないという前提でお願いしますね。それでは物語に戻ります。
確実にお金が増える案件に前向きのあなたに対して、彼は「もうひとつの方ですが」とミネラルウオーターを口に運んでから「100万円を投資すると50%の確率で100万円儲かるか、50%の確率で50万円を失うというものです。先ほどの案件と違って貯金を減らすリスクを伴います」と。
さて、直感で答えてください。あなたはどちらの案件を選んだでしょうか?
1の確実に25万円もらえる方? それとも、50万円を失うリスクをとってでも100万円がもらえる方?
ちなみに1を選ぶ人が多い傾向にあるようです。これについて詳細を論じる前に次の2択を考えてみてください。
1.100万円を投資すると確実に20万円値上がる
2.100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う
さて、今度はどちらを選びましたか?
期待値計算をしてみると分かりますが今回提示した2択において期待される利益は、1の選択肢が20万円であるのに対して2の選択肢は25万円です。つまり、2の選択肢を選ぶほうが賢いということになります。にも関わらず、全員が2を選択せずに1を選んでしまう人もいたということです。はじめの選択肢と加えてこのことについての議論が今回のテーマとなります。
■リスクプレミアムという考え方
まず本議論を進めていく前にリスクプレミアムという考え方を理解する必要があります。経済学を学習してきた人にとってはお馴染みの用語でしょうが、そうでない方のために簡単に説明させてください。
リスクプレミアムとは『あるリスク資産の期待収益率から無リスク資産の期待収益率を引いた差』のことです。これは、『リスクをとることによって上乗せされた利益』と言い換えることができます。
ここで冒頭で紹介した2つの選択肢をみていきましょう。
1.100万円を投資すると確実に25万円値上がる
2.100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う
期待値としてはどちらも25万円です。試しに2について計算してみると"50%×100万円ー50%×50万円=25万円"となりますね。しかし、実際にアンケートをとってみると1の選択肢「100万円を投資すると確実に25万円値上がる」が選ばれる割合が多いことが分かっています。どちらも期待値は変わらないにも関わらずです。これは数字だけで考えると不思議な現象です。
次に選択肢1を次のように投資しない選択肢へ変えてみましょう。
1.100万円を投資せずに貯金する
2.100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う
このケースにおいて2の「100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う」の選択をすると明確に回答した人の割合が30%程度であるという調査もあります。すでに皆さんはご認識の通り、2の選択肢の期待値は25万円のプラスなので投資をした方が得に決まっています。
これは損失回避行動と言われいて、人は得することよりも損をすることを嫌がるという性質によるものだそうです。つまり、人は概して数字通りに実行できず、リスクを回避して安定した利益を選ぶ傾向にあるということです。ここで数字通りに思い切りができるーーすなわちリスクを取れるという姿勢はそれだけで得することができるということです。
世の中は、このようにリスクを回避することで損をすることが多いです。理由は先ほど述べたように、安定した利益に対してはリスク分が上乗せされない一方で、リスク資産についてはリスク分が上乗せされるからです。例えば多くの保険商品はリスク回避思考を逆手に取った商売ですし、利回りの良い投資信託や債券があるにも関わらず貯金を選ぶ人が多いですよね。
そのような理由からリスクを避けている人は、避けていない人に比べて気がつかない間に損をしていることになります。これこそがリスクプレミアムによるものです。
さて、冒頭の選択肢も戻りますが、この2つのケースでは1の「100万円を投資すると確実に20万円値上がる」には5万円のリスクプレミアムが上乗せされていることになります。なぜならば2の「100万円を投資すると50%の確率で100万円の値上がり益か、50%の確率で50万円を失う」の期待利益が25万円だからです。
■人と同じことをしていては大きなリターンを得られない根拠
ソフトバンクの孫正義社長は何か事業をする際に勝率が6割であれば実行すると話されておりました。これは非常に合理的な思考です。半分より高い確率で勝てるのですから。
しかし、実際にこのように決断して実行できる人はどのくらいいるでしょうか。先ほど説明したように人はリスクを回避する傾向にあるので、多くの人は6割程度の勝率ではリスクプレミアム分を上回るほどの大きなリターンが見込めないと実行できません。そもそも勝率が高い勝負であれば誰でも戦ってしまうため、そこに優位性がなくなってしまいます。その結果、リターンが少なくなるのは当然の帰結です。
これが人と同じことをしていては成功できないという根拠です。人は基本的にリスク回避的です。人と同じことをするということはリターンの少ない安定を求めているということです。もちろんそれはそれで幸せな人もいるかと思いますが、リターンを大きくするという意味では誤った行動と言わざるを得ません。
そもそも世の中は、何かを選択すれば何かを失うようになっています。これまで金銭について考えてきましたがそれだけに限りません。このことは、知識や人脈、社会的地位や名声など多岐に渡って応用できます。ほとんどの人はリスク回避的な行動をとることで今ある現状を維持しながら何かを得ようと動きます。その行動の結果は一見すると何も損をしていないように見えますが、リスクを取っていれば得られた利益を失っていることになりますーーこれを機会損失といいます。この機会損失を念頭に入れて、リスクを許容できるようになるとリスク回避思考から抜け出せるようになれるかもしれません。
■最後に
以上から、リスクを許容することでリスクプレミアムの分だけ得ができ、また、大多数のリスク回避思考から抜け出した行動をとることで大きなリターンが得られるようになることが期待できます。
本記事内でも述べたように、リスクを取るということは金銭的な話だけではありません。もちろんリスクをとらずに安定的な人生を歩むことも一つの選択だと思います。しかし往々にしてリスクをとることが自分の思った人生への近道になることは覚えておきたいですね。
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人々の多くは、環境を改善することにはとても意欲的ですが、自分自身を改善することにはひどく消極的です。
何かにつまづいたときや、思い通りにいかないとき、不安に感じているときーー人はどうしても環境のせいにしがちです。そして、その環境を変えようと努力はするが自分を変えようとは思わない。
大前研一氏は人が変わる方法について次のように話しました。
2番目と3番目は環境を変える話です。しかしよく考えていただきたい。これは根本原因が何かをつきつめずに手段を提示しているだけに過ぎません。確かに実践できれば一時的には変わることはできるでしょう。が、住む場所を変えても飽きて元に戻らないといえるでしょうか。いきなり何のキッカケもなしに、突然つきあう人を変えることはできるでしょうか。
大前氏のような傑物であれば即実践することが出来るかもしれません。そして継続させることもできる。しかし、これまでに大きな実績のない大多数の人にとっては実践することも、その恩恵を継続的に受け続けることも難しいと思われます。
つまり、これは根本原因を解決した上で実践しなければ効果をなさない可能性が高いということです。
逆に、根本原因さえ取り除いてしまえば人は変われます。大前氏は先ほどの名言の後に「もっとも無駄なのは決意を新たにすることだ」とも話しています。決意を新たにすることに意味はありません。もっと根本で変わることができれば自然と決意も固まることになるでしょう。
その根本が何かというと「思考」です。人は思った通りに成長し、環境もそれに追随します。それでは順番に説明していきたいと思います。
■思考が人格を作り上げる
人間は思った通りに成長します。これはその場限りの一時的な思いではなく、本心からの長期的な思いのことです。
有名な経営者やスポーツ選手は、ただ漠然と普通に生きていた結果今の自分たちに成れたのでしょうか。そんなはずはありません。経営者であれば、自分の力がどこまで通用するか試したい、世の中のために新しいサービスを作りたい。また俗物的ではありますが、誰よりも金持ちになって名誉を得たい、と考えた人もいるかもしれません。スポーツ選手であっても、誰よりも上手くなりたい、オリンピックで金メダルを取りたい、スポーツで成功して家族に楽をさせてあげたい、等。
その分野で有名になるというのは非常に大変なことです。強い思い無しで長続きできるはずがありません。テレビでは成功部分にしかスポットが当たらないため、視聴者からは「運が良かったんだなぁ」と一言で片づけられてしまいがちです。しかし、その成功の裏側には多くの挑戦があり、失敗があり、そして挫折があります。それらを強い思いを持ちながらも乗り越えたからこそ今の彼ら/彼女らがあるわけです。
逆に環境に身を置いてさえしまえばいいかというとそうでもない。
確かに周りの影響はキッカケにはなるかもしれませんが継続するには物足りない。人間は概して熱しやすく冷めやすい。外からの影響だけではすぐに冷めてしまう。内から湧き出すエネルギーがなければモチベーションを維持し続けるのは難しいということです。
人はこうした思考によってイメージされた人物になっていく。強烈な思いに外部環境の入り込む余地はない。つまり、思考が人格を作り上げることになります。
■人格が環境を作り出す
人格が思考から作られた後、その人格から環境が形成されます。
人は居心地の良い環境を選んで定着します。例えば、学校のクラスが良い例です。クラスとしては1つのまとまったグループですが、その中でいくつかの小集団が出来あがっていきます。クラス全員が等しく均等に仲が良かった、という激レアな環境にいた人はほとんどいないでしょう。
なぜクラスの中でグループが分かれるかというと人は居心地が良いところに集約されるからです。共通の話題が増えたり、普段の何気ない会話でも同調する機会も増えます。異なった人格を持つ者同士よりも、同じ人格を持った者同士の方がまとまりが良くなります。企業が採用時点で自社の理念にあった人材をふるいにかけるのも同じ理由です。本気で世界一のスポーツ選手を目指している人が、何も目的を持たずに他人の足だけを引っ張っているような人と付き合うはずがありません。
逆に自分自身を偽って、自分の望んだ環境に入ろうとしても難しい。そしてこの相違が往々に起こっているのが現実です。なぜならば、記事の最初の方に書いた通り、人は自分が変わるよりも環境を変えようと働きかけてしまうからです。その結果、理想とする環境と自分に最適な環境というのは必ずしも一致しないことになる。
「人間は周りにいる5人の平均をとったような人になるものだ」と、アメリカの有名な起業家ジムローン(Jim Rohn)は言いました。まさにその通りで、環境は自分自身の写し鏡となります。そこで環境を変えたいと思った場合に周りを変えようとはせず、自分自身が変わるように行動することが肝要になってきます。
■自分の考え方を変えるしかない
思考が人格を作り、人格がそのまま環境を作り上げます。人はこのように収まるところに収まるようになっています。にも関わらず環境との不整合が常日頃から頻繁に起こってしまっています。友達に合わせるのが面倒くさい、レベルの低い集団から抜け出したいーーこう感じる場合は環境のせいにするのではなく、自分自身が今現在そのレベルにあることを意識して反省し、考え方を改めることからはじめます。
多大な労力を支払えば、もしかしたら環境を変えることも可能なのかもしれません。その過程で自分の考えが変わっていくことがある可能性はゼロではないのかもしれません。しかし、自分でコントロールできる範囲を変える方がはるかに労力は少なく済む。自分の行動の結果、望んだ環境が手に入るのであれば、そちらを選んだ方が賢明ではないでしょうか。
■「原因」と「結果」の法則
本書は、「人を動かす」で有名なデール・カーネギーも影響を受けたほどに自己啓発書の先駆けです。稲森和夫も「成功の秘訣から人の生き方まで、すべての原理がここにある」と語っています。世の中の自己啓発書はすべて本書に集約されるとまでも言われるほどの名著なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
作者のジェームズ・アレンがは一貫して「世の中は秩序によって動かされている」ということを主張しています。本記事でも説明したように、思考が人格を作り、環境に反映される。ただこの秩序通りに動いているだけでしかないと。
具体的な事例がちりばめられている一般的な自己啓発書とは違って、シンプルに成功哲学がまとめられています。なので、イメージしづらかったり、読みづらいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。そういう意味では、いくつか自己啓発書を読んだ後に読むと、如何に本書が要点を絞ってまとめられているかを実感できるかと。
もし、今何かに悩んでいたり、不安に感じていることがあったり。逆に、何かに挑戦したいと思っている人がいたら、是非本書を手に取っていただきたいと思います。
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